side heroine.
「おはようございます、お嬢様。既にご朝食の用意が整っています」
『おはよう、高月』
その日、いつものように高月に起こされて見た自分の部屋は、いつもと違っていた。
そういえば、昨日から日本に来たんだったな、と思い直して挨拶を返した。
「着替えがお済になりましたらお呼びください」
高月は一礼して扉の向こうに消えた。
私はベッドから降りると、高月が用意してくれたのであろう制服を着る。
白いシャツに黒のネクタイを締め、淡い黄色のブレザーに同色のスラックスをはいた。
ショートの金髪のウィッグをかぶって鏡を見ると、そこには"いつもの"自分がいた。
青春学園中等部。
その校門の前に一台のリムジン(もちろん私の車だけど)が止まると、登校してきた生徒たちがザワザワとしだした。
『高月。ここの制服、いつ届くって?』
「はい。一週間以内には」
『そう…』
この学校は、セーラー服か…。
なんて思っていると、高月が運転席から降り、後部座席のドアを開けた。
それにならって外へ出ると、周りがさらにざわめきだす。
「外国人!?」
「うゎっ、カッコイイ!」
周囲をちらりと見てから、高月が差し出したカバンを受け取る。
「行ってらっしゃいませ」
あえて"お嬢様"の部分を言わない高月にクスリと笑い、こちらに向かって礼をしている彼を背にして歩き出した。