悲しみの回顧

□新たな転校生
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side heroine.



幸村「朱音、おはよう」

『おはよ、精市』

幸村「聞いたかい?またうちのクラスに転校生だって」

『また?』

幸村「うん。しかも、朱音と同じイギリスかららしいよ」

『へぇ…偶然ってあるのね』



転校してきて1ヶ月、また来るのだという転校生にはそんな印象しか持っていなかった。















なのに、



「アカネー!会いたかったよ、マイハニー」



教室に入ってくるなり抱きついてきたこの金髪を、私は知っていた。



『く、クリス…!?どうして、日本に…』

クリス「だって、アカネに会いたかったから。また毎日一緒だね!」

幸村「…朱音、彼は…?」

クリス「アカネの友達?僕はクリストファー・カークランド、クリスって呼んでね!今日からよろしく!」



幸村に聞かれたクリスは、そのままクラス全体へ向けて自己紹介をした。

テニス部のみんなとも打ち解けてきて、部活も無理のない範囲で参加できている。

クリスの転入は、そんな穏やかな日常に、賑やかな日常の訪れを感じさせるには十分だった。



クリスのことはもちろん好き。

ただ、それは恋愛感情とかそういうものじゃなくて、家族に向けるようなものだった。



クリス「アカネ!」



私を好きだと言ってくれることは嬉しいけれど、ちょっと真っ直ぐ過ぎるところには苦笑せざるを得ない。

こればっかりは、彼に治してもらいたい部分だった。



幸村「…随分、彼と仲が良いね?」

『…あぁ、うん…。クリスは幼なじみの一人で。だから、小さい頃からよく一緒にいたの』

幸村「そうなんだ。俺も知りたいな、昔の朱音のこと」

『…、…そうね。その内…』



過去を話すことには、やっぱりまだ抵抗があった。

もちろん、それが必ずしも"あの時"のことを話すという意味でなくても───。















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