side heroine.
再び学校へ行くことができないまま、気が付けば週末になっていた。
あまり人には会いたくなくて、用がない限り、基本的に部屋から出なかった。
だけど、何となく外の空気が吸いたくなって、本当に何となく窓を開けた。
―――……ッ…
何かの音が聞こえた。
これは…、
『…テニスボール?』
ボールがラケットの上で、はねて、転がって、そしてはじき出されていく音。
テニスは好き。
だけど、この力と体のせいで、もう昔のようなテニスをすることはできなくて。
どこで、誰が、この音を奏でているんだろう…。
それはほとんど無意識で。
彼方に何かを告げることもなく、私はその音の聞こえる方へ向かった。
音の発生源は思ったより近い場所で、向かいの家の裏、そこにある寺の境内だった。
そして、境内にあるテニスコートには、彼がいた。
『…越前君…』
家族だろうか、越前君の面影のある男性と打ち合っている。
ひたすらにボールを追えるその姿を、とてもうらやましく思った。
彼のテニスを見ていたら、自然と、涙があふれていた。
『…っ、…』
越前「…!…水島?」
『…越前、君…』
「何だリョーマ、知り合いか?」
越前「…クラスメイト。…何してんの?」
『ボールの、音が、聞こえたから…』
今の私なら、気づかれたことで、すぐにでもその場を去っていたはずだった。
だけど、その場を動けなくて、越前君の問いに答えていた。