Twelve-year-old mother -12歳の母-

□テニスとは
1ページ/3ページ




side heroine.



再び学校へ行くことができないまま、気が付けば週末になっていた。

あまり人には会いたくなくて、用がない限り、基本的に部屋から出なかった。

だけど、何となく外の空気が吸いたくなって、本当に何となく窓を開けた。



―――……ッ…



何かの音が聞こえた。

これは…、



『…テニスボール?』



ボールがラケットの上で、はねて、転がって、そしてはじき出されていく音。

テニスは好き。

だけど、この力と体のせいで、もう昔のようなテニスをすることはできなくて。



どこで、誰が、この音を奏でているんだろう…。

それはほとんど無意識で。

彼方に何かを告げることもなく、私はその音の聞こえる方へ向かった。















音の発生源は思ったより近い場所で、向かいの家の裏、そこにある寺の境内だった。

そして、境内にあるテニスコートには、彼がいた。



『…越前君…』



家族だろうか、越前君の面影のある男性と打ち合っている。

ひたすらにボールを追えるその姿を、とてもうらやましく思った。

彼のテニスを見ていたら、自然と、涙があふれていた。



『…っ、…』

越前「…!…水島?」

『…越前、君…』

「何だリョーマ、知り合いか?」

越前「…クラスメイト。…何してんの?」

『ボールの、音が、聞こえたから…』



今の私なら、気づかれたことで、すぐにでもその場を去っていたはずだった。

だけど、その場を動けなくて、越前君の問いに答えていた。















次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ