side other.
翌日の昼近くになって、朱音はようやく落ち着いた。
そして、
目を、覚ました───。
しばらくぼーっとしていたが、その瞳がベッドのそばにいる高月と北原をとらえた。
『…、…た、…』
高月「…お嬢様?」
あまりにも小さく、その声を聞き取ることはできなかった。
高月は朱音の口元に耳を近づける。
『…かな、た…』
朱音の発した一言に、高月は言葉を失った。
彼方───その呼び名は、記憶が戻ったことの証。
彼方「お嬢様…記憶が、戻られたのですか?」
『今まで忘れててごめんね、…彼方。純香さんも、ありがとう』
純香「…いいえ」
本当の朱音が、ようやく戻ってきた。