〜物置部屋〜

□チョコホリック
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男に対しても紳士的な和臣に、早瀬の胸は締めつけられる。
そうじゃなくても、こうやって横並びに座ってるだけで息苦しいというのに。
和臣が話しながら立ち上がり、早瀬に背を向けた時。
早瀬の身体は、自然とその背中を追った。
和臣の背中に、上体を押し当てる。
「…先輩?」
和臣の身体が強張ったのが、早瀬に伝わった。
「聞かないの?さっきの…」
そう聞いたのは、怖くて仕方なかったから。
「大人には大人の事情がありますから。話したくないことだったら悪いじゃないですか」
あまりにも和臣らしい答えに、早瀬は小さく笑いを漏らした。
「お前は学生時代からそんなだったよね。達観してるっていうか、俺より全然大人だった」
「そんなこと…」
「あの時も、さ」
否定しようとした和臣の言葉を遮り、学生の時には言い出せなかったことを口にする。
「見てたんだろ?お前、何も言わなかったから、それに甘えてたけど。軽蔑されんのかなって…思ってたのに、お前は態度変えなくて。実は、すっげー嬉しかった」
本当は…言わなきゃいけなかったのに、あっという間に自分が卒業して。
あの時の和臣に、本当に救われたこと。
お礼も言えずにいたことを、ずっと後悔していた。

あの時から、和臣に好意を抱いていたことも…――。
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