ハイキュー月島長編

□02。
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電気のついてない薄暗い部屋で一人目を覚ます。荷物を片付けていたら途中で寝てしまったのだ。
自分の体に目をやるとさっきまではなかったはずの薄手の毛布が私の体に被さっていた。


「…蛍ママがかけてくれたのかな?後でお礼しなきゃ」


ベッドから降り、電気をつけて残りの荷物を片付ける作業に移る。


「えーっと、これはあそこに入れるかな。次は…ここでいっか…」


てきぱきと動き一通り済んだあとに部屋を出ると、いい匂いが私の鼻をくすぐってきた。きっと蛍ママが晩御飯の準備をしているのだ。

居候の身、手伝わないわけにはいかないため、急いで1階のキッチンへと向かった。




「すいません、遅くなりました!」

「あら名前ちゃん。もう片付けは終わったの?」

「はい。晩御飯の用意手伝います」

「そんな気を使わなくていいのに」


優しい蛍ママはそう言ってくれるが私としてはお言葉に甘えることはできない。


「そうねぇ、でも今日は名前ちゃんが家に来たお祝いも兼ねてるから大丈夫よ」

「でも…」

「ふふふ、ありがとう。じゃあ明日からは手伝ってもらおうかな。だから今日はお願いね」

「…わかりました」


渋々と承諾し、私は晩御飯ができるまでソファーに座ってテレビを見ることにした。

しばらくすると美味しそうな料理がテーブルに運ばれてきた。


「おいしそう…!!」

「嬉しいこと言ってくれるわね〜!あ、そうだ蛍呼んできて貰える?」

「はーい」


早くあの美味しそうな料理を食べたいという気持ちに包まれたまま階段を上り蛍の部屋のドアをノックする。
返事はない。
もう一度ノックする。やはり返事は返ってこない。
しょーがないなぁと思いながらドアを開け部屋を覗くとヘッドホンをつけて雑誌を読んでる蛍の姿があった。

後ろを向いているため私の存在には気づいていないだろう、と思いきや。


「勝手に部屋に入んないでくれる?」


こっちを振り向いて嫌そうな顔をしながらやつは言った。


「何度もノックしましたが?」

「ふーん…あっそ」


つくづく可愛くないやつだな!


「で、用は?」

「晩御飯が出来たからこいって」


私の言葉には反応せずに、雑誌を本棚にしまいヘッドホンをとり、そさくさと私を残し部屋を出ていった。


「本当にこれでやってけんのかなぁ…」


私の呟きに答えをくれる人なんていない。



*****



「ん〜〜!おいしい!!」

「ありがとう〜!頑張って作ったかいがあったわ」


蛍ママの作る料理はまるでレストランに出てきてもおかしくないほど美味しかった。
味は勿論だが、盛りつけも美しく、健康に気をつけてるのが分かるほどバランスのよく取れたものばかり。
こんな美味しいものを毎日食べていた蛍がすごく羨ましい。

そんな当の本人は無表情で食べながらテレビを見ている。ハプニング映像を集めた番組だった。


「そういえば名前ちゃんって高校はどこ行くの?」


おじさんが石から滑って水の中に落ちてしまう映像を見ていたら蛍ママが訪ねてきた。


「烏野高校です」

「え」


テレビから全く目を離していなかった蛍が私の方をバッと振り向いた。


「あら、烏野高校なの?偶然ねー。蛍も烏野高校なのよ」

「え」


笑顔を浮かべた蛍ママの爆弾発言にさっきの蛍と同じ反応をしてしまった。


「良かったわねー二人とも」


全然よくない、いや、これといった悪いところはないんだけど全然よくない!!!

それから私は食べ終わるまで、せっかくの美味しい料理を味わうことができない状態だった。



*****



洗い終わったお皿を食器棚に入れる。


「ごめんね、洗い物やらせちゃって」

「全然大丈夫です。それに洗い物は小さい頃からやってたからやらないと落ち着かないっていうか」

「偉いなー。蛍なんて全くよ〜?少しは名前ちゃんを見習って欲しいぐらい」


あはは、と苦笑いをする。
そこでふっと荷物を片付けてた時のことを思い出した。


「あ、さっきはありがとうございます」

「さっき?」

「毛布のことです。掛けてくれたんですよね?」

「??何のことかしら?私は毛布なんて掛けてないけど…」

「え…?でもさっき確かに私が起きた時に………、!」


蛍ママは私に毛布を掛けてない…?
じゃあ、掛けてくれたのは…まさか…、





蛍…?



end

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