ショート

□赤也
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「………で、この文法は……だからここにhave を入れて……」
ああ、眠い…。6限目の英語はどうしてこんなに眠いんだろ。
ふと、斜め前の席にいる赤也くんの方を見ると目が合った。
授業聞いてないじゃん。ニコニコしてこっち見てるけど先生がめっちゃ睨んでるよ……。
「切原! お前話を聞いてないだろ! 放課後職員室に来い、俺の手伝いをさせる」
「えぇ!? 俺、放課後部活あるんスけど……!」
必死に先生に抗議する赤也くん。それでも先生の意志揺るがず。と、ここでチャイムが鳴り6限目が終了した。
赤也くんのことは真田先輩に報告しとかなきゃ。
「くっそー! あぁ……、また副部長に説教される……」
赤也くんがそう言いながらこちらへ来た。
落ち込んでる赤也くんって子犬みたいだなぁ。頭を撫でていると赤也くんがいきなり抱き着いて来た。
「ナマエー! 」『うわ、調子に乗らないの!』教室で何てことしてるんだろ、恥ずかしい…。
『それじゃ、私はもう部活行くからね。赤也くんのことは真田先輩に言っておくから』
早く終わらせて来てね、言うと赤也くんからは元気な返事が返ってきた。
「おう!」





練習も中盤に入った頃、真田先輩が私の元へやって来た。
「赤也はまだ終わらんのか!?」
『どうですかね、もうそろそろだと思うんですけど……あ…、』
来ました、そう言うなりガバッと正面から抱き着かれた。
『………あ、赤也くん……!? 何して……』
「やっとアンタを見れたー!」
そう言って赤也くんはぎゅうっと、力を入れた。
ぎゃー……!恥ずかしい恥ずかしい!テニス部皆に見られてるよぉ…。
『赤也くん、離して……』
そう言った瞬間に赤也くんから「ぶっ!!」と、いう声が漏れた。
「赤也、彼女嫌がってんだろ」
丸井先輩が言いながら私から赤也くんを離してくれた。
私は丸井先輩に御礼を言って赤也くんへ今日の練習メニューを渡した。
『このメニュー終わらないと帰れないからね、』
真田先輩も続いて言う。
「赤也は遅れた罰として今日の部活が終わるまでにこのメニューを全て終わらせてもらう」
真田先輩のその言葉を聞いた赤也くんは声をあらげた。
「そんなぁ!! んなの無理に決まってるッスよ!」
ナマエ、柳先輩にそう言われて頷く。
『…赤也くん。早くそのメニュー終わらせてね!一緒に帰りたいから』
私の言葉を聞くなりすぐさまコートに走った赤也くん。
『こんなんで上手く行くなんて……』
「赤也は単純だからな」柳先輩はそう言ってふっと、笑った。
単純過ぎると思うなぁ。



『ねえ、6限目、何で私の方見てたの? 一番前なんだから前向いてないと駄目じゃん』
帰り道、私は赤也くんに気になったことを質問してみた。すると、赤也くんは普通の顔で答えた。
「暇い英語なんか勉強するよりもお前のこと見てた方がいいに決まってんじゃん。俺、お前のこと大好きだし」
『…………………』
これは狙ってるのかなぁ……。赤也くんって天然なんだよな……。
恥ずかしい……。でも嬉しい。
言葉では表せない気持ちになり赤也くんの背中を叩いてみた。
「いって! んぁ?俺なんか悪いこと言ったか?」
『な、何でもない……!』
そう誤魔化すと赤也くんは頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
天然過ぎるよ、この悪魔。

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