ポケモン

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長い回想に付き合ってくださり、ありがとうございました。只今の私はやはり、何時ものように出勤をしています。あれからの私はぶっちゃけ、トリップ前の生活と何ら変わりのない平凡な生活を送っております。ポケモンも持っていないので、ジムトレーナーにもなれません。最初の頃は、折角だしとポケモンを捕まえようと思ったこともありました。しかし、すぐに思い返しました。もしこれが、アニメ沿いでなくゲーム沿いだったらどうであろう、と。変な服を身につけたプラズマ団とかいう奴らにポケモンをとられたら、私はきっと取り返す事などできないでしょう。その頃にはもう、私も世の中の非情さを十分に理解していたのでした。……ポケモンをとられたときに 、取り返してくれるヒーローなんてそうそう現れない事も。それが原因で、未だにパートナーと呼べるポケモンを持っていないのです。

……ああ、すいません。私の事などどうでもいいですよね。でも、私今ここで働いて初めて男性に絡まれているのです。何処にでもいるものですよね、こういう馬鹿は。私なんかでいいのかとも思いますけれど。それにしても、

「はあ……」

「ねえ、良いじゃん。ライブキャスターの番号とか交換しない?」

「いえ、当店ではその様な商品は取り扱っておりません。お引き取りください。」


まあ、よくも諦めないものです。先程から上記の会話しかしていません。っていうか、そろそろだれか、助けてくださってもいいのでは?この際三つ子なんて贅沢なことは言わないので、他のウエイターさんっ。……あ、目反らされた。しかし、そんな私に近づく一つの影が。私は振り反って、固まりました。

「それほどうちの者と話したいのでしたら、このコーンがお相手しますが?」

何故なら、顔合わせ以来一度も話したことのない、コーンさんがそこにはいたのですから。しかし驚いている私とは反対に、男性客は、顔を赤く染め怒鳴り始めました。

「そんなんじゃねぇよ!くそっ、おい女ぁ!お前もお前だ!勘違いすんじゃねぇぞ!お前みたいな平凡女、誰が相手するかよ!」

その言葉に、私だけでなく、コーンさんまでもが眉を潜めました。本当にいい人です。コーンさんはちらりと私に目を向けると、気にしなくて良いから下がっていなさいと小声で呟きました。……私は赤くなる頬を抑えながら、その場を退出しようとしました。、が。男がまた騒ぎだしました。

「そこの女が狙いな訳ねぇだろ!こっちはミクルちゃん狙いだっつーの!」

「「「………はい?」」」


…いや、はい?と言いたいのはこっちです。私が絡まれていたときはギリギリまで何もしてくれなかったのに、あなたたち三つ子は一体何なんですか!ポッドさんやデントさんも此方に来るのを目の端に入れながら、私はそそくさと退場しました。……赤かった頬が、急激に覚めていくのを感じます。


……やっぱり世の中上手くいきませんね。

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