嘘のない笑顔で BOOK
□大空な君
1ページ/1ページ
獄寺君が転校してきてから、数日が経った。
転校初日はあれほどツナ君に対して敵意剥き出しだったのに、次の日には「十代目!」なんて言ってツナ君の後を付いて回っていたのを見て、ああやっぱり私の知っている獄寺君だと思った。
うーん。獄寺君とも話してみたいな。サインして貰えるかな?
……無理だとしても、握手位はしてくれないかな?
ぼんやりと考えていた、朝の時間。これからいつも通りにの一日が始まると思ってたのに。
「大変だー!山本が屋上から飛び降りようとしてる!!!」
叫びながら教室に駆け込んだクラスメイトの言葉に思わず目を見開く。
…え、なんで?
飛び降りたら、死んじゃうんだよ?なんで、山本君が?
暫く「死」と関わりがなかったからか、急に身近に感じられたその存在に、身体中の血液が音をたてて暴れまわる。
気が付くと、いつの間にか教室に取り残されていたのは私とツナ君だけで。
ツナ君も顔を真っ青にして呆然としていた。
『……ツナ君、私達も、行こ?』
ようやく途切れ途切れに出した声は、心なしか震えていて。
やっぱり「死」の存在に慣れることなんて出来ないんだなあ、なんて、冷静に思った。
『ツナ君は凄いなあ』
結果的に言うと、山本君は、助かった。
あの後すぐに駆けつけたツナ君によって、助けられたのだ。
周りの皆は、この自殺未遂事件は山本君の冗談だって言っていたけど、私は何故かそうは思えなかった。
ツナ君は凄い。山本君を、屋上から飛び降りてまで助けたのも凄かったけれど、その前に山本君の心を変えるほどの言葉を言ったのが、純粋に凄いと思った。
優しく人を包み込むような暖かさを持っていて、誰とでも真っ直ぐに向き合っていく彼は、まるで大空だ。
(詩人すぎたかな)
(でも)(キミの言葉に涙が零れた、なんて)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夢主ちゃんも、死ぬ気で何かに取り組んだことがない訳です。