嘘のない笑顔で BOOK
□誤解
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朝、学校に行くと、既に昨日の事が噂になっていた。
どうやらあの現場を見ていた人がいたらしい。
…………それにしても、真実に尾ひれがつきすぎだと思う。
私はただ、裸の沢田君から告白まがいのギャグを見せて貰っただけだと言うのに。
そう思って受け流していたけど、流石に『昨日くるみちゃんが、裸の沢田に襲われそうになった』という噂を聞いたときは、思わず咳き込んでしまった。
暫く溜め息をついていると、暗い顔をした京子ちゃんと、ニヤニヤしている花ちゃんがやって来た。
「くるみ!昨日は災難だったわね。」
『………滅茶苦茶いい笑顔だね、花ちゃん。』
ちょっと膨れながら言うと、花ちゃんは笑って、私の頭を撫でながら謝ってきた。
むぅ。完全に子供扱いだ。
その時、ドアを開ける音がして、反射的にそちらを向く。………瞬間、教室を沈黙が包んだ。
沢田君だ。
しかし沈黙は一瞬で、その後、クラスの皆が彼に冷やかしの言葉を浴びせる。
私は沢田君の困った顔を見て、罪悪感がわいた。もっと皆の誤解を解く努力をすればよかった。
………今さらそんな後悔をしても遅いのに。
私は、沢田君が何故か剣道場へと連れていかれるのを見ていることしかできなかった。