今夜、君のとなりで

□1
1ページ/1ページ






ピンク、水色、黄色。
淡い色合いを好みがちで、いつも浴衣はパステルカラーだった。
でも、今年でもう高校生もおわる。
いつまでも子供っぽくみられたくなかったから、今年は黒と青が基調の大人っぽいデザインの浴衣を選んだ。

『大丈夫かな、子供っぽくない?』
「浴衣買ったときは背伸びしすぎかと思ったけど、大丈夫。そんなことなかったみたいよ」

お母さんが帯をとめながら満足そうに頷いた。

「ほら、できた」
『ありがとう。じゃあ行ってくるね』
「気をつけるのよ」
『うん』

急いで玄関を出ると、茶色い髪が塀の向こうに見える。
まさかと思って顔を覗かせると、綱吉くんが立っていた。

『わざわざ来てくれたの?』
「少し早く待ち合わせ場所についたから」

ふわりと笑ってくれた綱吉くん。

『インターホン押してくれればよかったのに。暑かった?』
「ううん。今着いたばっかりだよ」

そう言った綱吉くんの額にはうっすらと汗がにじんでいた。
多分、本当は結構待っててくれたんだと思う。
ハンカチを出して拭いてあげると、予想外だったのか、顔を赤くさせた綱吉くんがかわいくて、思わずくすくすと笑ってしまう。
綱吉くんは照れ臭そうに顔を逸らして、私の左手を掴むと歩き出した。






 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ