HM-side

□こちょこちょ
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「ひぎゃーっ!?な、なにすんの!?」



 《こちょこちょ》



 ラボの片隅で何やら騒がしいのが一人…いや、二人のようだ。
そちらに目をやれば、ブレークダウンと、その手の上に小さな生き物が一匹。
名をハジメというその少女はたしかスタースクリームのペットではなかったか…?

『何をしている?ブレークダウン。間違って潰したりしたらスタースクリームに怒られ…』
「縁起悪いこと言わないでよ!あたしまだ死にたくないよ!」
『だから潰さないように気を付けてやってる。』
「潰れるわ!いったい何なの!?」

太い指を突き付けるブレークダウンに、その手の上で抵抗するハジメ。
この二人は何をしているのやら…

「あたたたたっ…!折れる折れる!」
『暴れるからだろ?』
「痛くしなきゃ暴れませんけど!?ぐえっ…!」
『あ、大丈夫か?』
「大丈夫じゃないし!」
『はぁ…』

コレはコレで怒りそうだ…

『ほら、ハジメをわたしなさい。』
『えー…』
『えー…じゃない。ほら、早く。』

ブレークダウンの手からハジメを奪い取ると、その頭を指先でそっと撫でてやった。

『かわいそうに。』
「んー…痛かったよ…」

おとなしくナデナデされているハジメ。
その光景を不思議そうに眺めているブレークダウン。

『俺がやると嫌がるくせに。』
「だってグリグリしてくるんだもん。痛いんだもん。ヘタなんだもん。」
『うっ…』

ハジメの言葉に凹んだらしい。
ブレークダウンはしょんぼりして黙ってしまった。

『いったい何がしたかったんだ?』
『スタースクリームがいつもくすぐってるだろ?おもしろそうだったからやってみたかったんだ。』
『ハジメはスタースクリームのものだ。勝手に体中触りまくっていいわけないだろ?』
「そーだそーだ!」

ノックアウトの手の上から叫ぶ小さな生き物。
こんなに小さいのに、スタースクリームはよく器用にくすぐれるものだと思う。
器用なのはノックアウトもだが…

『あ…俺じゃあ指が太いからくすぐったくならないのか?』
『大事なのは“力加減”と“くすぐる場所”。』
『?』
「ひゃぉわあっ!?い、いきなり…あっはは!や、やめっ…あはははっ…!やめてー…!」

いきなりハジメの脇腹をこちょこちょやりはじめたノックアウト。
くすぐったがりのハジメは彼の手の上で笑い転げている。
スタースクリームが可愛いと言っていたのはこのことだ。
ブレークダウンはこれがやりたかったのだ。

「はぁ…はぁ…疲れた…」
『ね?』
「ね?じゃないわ!くすぐられるのだって結構苦しいんだからね!?」
『それは失礼。』
『笑ってるだけなのにか?』
「笑いすぎると息ができなくなるんだよ!人間は息できないと死んじゃうの!わかってる!?」
『そうなのか。』
『なら笑わなければいいでしょう?』
「へっ…?」
『我慢、ですよ。』

ニヤリ…と、嫌な感じの笑みを浮かべたノックアウト。
100%危険なことを考えているに違いないのだが、今ハジメはその彼の手に捕まっている。
逃げられない…

「ま、待って…早まっちゃダメだよノックアウト先生…」
『何を怯えているのです?私はハジメが苦しくならないように練習に付き合ってあげるだけですよ?』
「私その練習いらない…!私はスタースクリームのだよ?勝手に触りまくったらダメだって!」
『あまり抵抗すると落ちますよ?クククッ…』
「ひっ…人でなし!」
『人じゃありませんから。』
「そうだった…きゃうっ!?あははははっ!や、やっぱ無理ィ〜〜ッ!!」

再びノックアウトにくすぐられるハジメ。
逃げたいが、このまま手の平からおっこちて遥か彼方の床とごっつんこなんてお断わりだ。

『ほら、声を我慢しなさい。』
「あははっ…!むっ、無理!っていうか、台詞おかしっ…へぶっ!?」
『ブレークダウン、邪魔をするな。』
『悪ィ…』
『ハジメが潰れてしまう。』
「はぁ…殺されるかと思った…」

かといって、このままでは笑い死ぬか、誰かしらに潰されそうな気がするが…

「ひゃあんっ!?」

ノックアウトの指先が何の前触れもなく背中を撫で上げ、明らかにヘンな声が出てしまった。
ハジメは顔を真っ赤にして両手で口を覆う。

『おやおや?今とっても可愛い声がしましたが?』
「急にやるから…!」
『そうですか。背中が感じやすいんですか。わかりました、と…』
「ノックアウトのアホ!変態!どスケベ!」
『何とでもどうぞ。』
「やぁっ!?ちょっ…バ、バカッ!やめっ…やーーっ…!!」
『クククッ…その表情、可愛いですよ…』
「ひぃっ!?」

再びノックアウトの手がのびた瞬間、ハジメの体はふわりと宙に浮いた。

『『あ…』』
『テメェら!ハジメに何してやがる!?』
『コミュニケーションですよ。退屈そうだったし。』
『エロイ触り方すんじゃねェ!っていうかハジメに触んな!変態共!』
『俺も変態あつかいかよ!?』
『甘美な世界へようこそブレークダウン。』
『俺はそんな世界に歓迎されたくないぞ!』

漫才をはじめた(?)二人のことは放っておくことにして、間一髪でスタースクリームに助けられたハジメは彼の肩の上でまた機嫌良く足をぱたぱたさせるのだった。

『落ちんなよ?』
「うん。」



 
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