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□ROLL-02-
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 “フラレた”



 《ROLL-02-》



 そんな電話をかけて、“普通”の女友達と長電話をした。
泣いたのは久しぶりだし、泣きながら電話をしたのは初めてだ。
周りからはよく『感覚がズレてる』だとか、『男みたい』だとか言われていたが、自分が周りの同世代の女の子たちと同じになったような気になれた。

『また酔っ払って正体無くしたの?』
「グズッ…らって…どうしたらいいか、わかっ…ないしっ…」
『それで、目が覚めたらまた自分の部屋だ?』
「言いづらいけど…彼のベッドで寝てた…」
『え…』
「まだお酒残ってて、何しゃべったのか、よく覚えてなくて…」

“大人をからかうのも大概にしろ”

「うぅ…うぁぁぁぁんっ…!きらわれちゃったぁ…!」
『あぁ、よしよし…ね、ノゾミ、おちついて?』

電話ごしの友達の声は、ノゾミがすっかり忘れていた穏やかさや女性らしさを感じさせた。

自分も、本当なら彼女のようであるべきなのではないかと思う。
闘うことに明け暮れて、並みの男たちより男らしい生き方なんかするよりも、こうして長電話をしたり、女子会をしたり、少しくらい着飾って街を歩いたり、イケメンだの何だのにうつつを抜かしたり…

『すっきりした?』
「すこし…」
『そっか。』
「ありがと…」
『いいって。』

普通の女の子になりたい。
今まで似合わないからと避けてきた可愛い服を着て、キラキラした小物に囲まれて、たった一杯の紅茶でカフェに居座ったり…
同世代の、普通の男と恋に落ちてみたり…

『あ!ねぇ、今度飲み会やるの。よかったらノゾミもおいでよ。』
「グズッ…のみかい…?」
『うん。みんなで騒いで忘れよ?飲み過ぎは禁止だぞー?』

何の変哲もない言葉が、ノゾミにはキラキラと輝いているように思えてならなかった。

「わかった…いく…」
『決まりね!可愛い服着て来なよ?』
「ない…一緒に選んで…」
『オーケー。それじゃ、またね?元気だしなよ?』
「うん…」

電話の彼女は服のセンスがいいと評判だし、一緒にショッピングに行けばコーディネートは間違いないはずだ。

普通の女の子になれる。そんな気がした。



 
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