OTHERs
□お伽話の結末は
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足が悪い、言葉が話せない、条件に当てはまるケースを調べあげたが、それらしい人質は浮かび上がらなかった。
しかし、今夜はひどい胸騒ぎがしていて、体は勝手に“目的の場所”に向かっていた。
もしかしたら…というより、そこしか無いような気がしてならなかった。
到着するなり鍵を壊し、ドアを蹴り開ける。
部屋の明かりはついているが、住人の反応はない。
吸い寄せられるように、ただ水の溢れる音だけが響くバスルームへ向かうと、乱雑に打ち付けられた鎖に繋がれた“人質”がバスタブに沈んでいた。
「ノゾミ…!」
今頃護送されているはずのジョーカーの高笑いが聞こえた気がした。
早くなんとかしなければ…
暴れる様子も、苦しむ様子もない人質の姿に、がらにもなく怖くなった。
バスタブを壊して一気に水を抜くと、体の自由を奪っていた鎖を外していく。
それがひどく長い作業のように思えた。
「……ぷはぁ…」
やっとのことで解放した“人質”は、胸を大きく上下させながら酸素を取り込んだ。
生きていたようだ…
「潜水……結構…自信あるんですよ…」
「…」
「…さすがに…もう、だめかと……」
ずっと水の中にいたノゾミの体は冷えきっている。
ブルースはノゾミをケープで包み込むように抱き締めた。
「あなた…」
「…」
こちらを見上げる褐色の瞳に、時間を止められてしまったような錯覚を覚える。
「ウェイン…さん…?」
「…」
驚いたことに、ノゾミはマスク越しの素顔に簡単に気が付いてしまった。