企画

□順平お母さんの日常
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オレの一日───本当の苦労は子供たちを送り出してから始まる。














「順、順っ、はやく行こーぜ!」
「解ってるっつのダァホ」

オレと鉄平は、現役の高校教師。

あ、勿論リコたちの学校じゃねぇかんな。

で、オレは歴史を、鉄平は体育を担当している。

同じ学校なせいか、学校中の奴等がオレたちは夫婦だと知っている。

が、

そのお陰で鉄平は例え職場でも堂々とオレに抱き着いたりしてくるワケで…。

他の先生方だけじゃなく、生徒たちにまでからかわれる始末。

全く……どうにかしてくれ。










「あっ、順〜、腹減ったぁ」
「まだ2限終わったばっかだろうが」
「あと順が足りない。充電させて?」
「充電だぁ?」
「こーすんの」
「、ぎゃっΣ」

そう言って鉄平はオレを抱き締める。

因みにここは……。

「廊下で盛んなダァホ!!!」

ホンット、所構わず抱き着きやがって…!

「あー、またやってんよ木吉先生たち〜」
「ひゅーひゅー、お熱いねぇ」
「だろ? けど順はオレんだから手ェだすなよー」
「冷やかすな手前らっ!!お前はお前で煽んじゃねーよつかいい加減離せ鉄平!!!」
「オレ本当の事しか言ってないぞ?」
「〜〜〜ッ、だからァ!!」

な? 言ったろ。

こんなんが毎日だぜ、たっくよ…。














そんなある日のこと。

授業について聞きたいことがあるからと、放課後職員室のオレのところまで一人の生徒がやってきた。

所謂、歴史好きな優等生。



20分程たっただろうか。

歴史について存分に語ったその生徒は席を立つ。

「先生、ありがとうございました」
「おぅ、気にすんな」
「オレ先生とだったら四六時中一緒に居たいです」

…? また話したいと言う意味だろうか?

「ぁー…ああ、オレは別に───」
「駄目に決まってんだろ」
「鉄平!?いつからそこに…!」

取り敢えず肯定しようとしたオレの言葉を遮り、いつからか居たのか、鉄平がすぐそばにいた。

「悪いけど、順はオレんだから。誰にも譲る気はないぞ」

いつもとは違い、真面目な顔で鉄平は言い放った。

「安心してください、木吉先生。
貴方達を敵に回すつもりはありませんので。
それでは失礼します」

そいつは笑って言うと、素早くここから出ていった。

未だに現状を把握しきれてないオレに鉄平は言う。

「…なぁ、順。今のちゃんと解ってて返事したのか?」
「あ? 何がだよ」
「……っはぁー…」
「??」
「これだから順は手を離せないんだよな…」
「鉄平?」
「兎に角!」

いつものへらっとした顔ではなく、キリリとした表情で。

「お前はオレだけの順だからな。
絶対他の奴になんかは渡さないから」

その低い声が、オレの脳内に響く。

たまにこう言うことをいきなりするから、不可抗力で胸が高鳴ってしまう。

その度に惚れ直してんだろうな、って思ったり。

だからオレは言ってやる。





「誰が他んとこに行くかよ、ダァホ」





笑って言えば、鉄平も笑う。





オレたちは暫く見詰めあった。


















………ここが職員室だと気が付いたのはもう少しあとの話。






END


 

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