企画
□涼太君の日常
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「ゆっきおさーん!」
今朝も日課になりつつある幸男さんへの挨拶のために幸男さんに会いに来た。
「幸男さんってばーぁ!!」
「毎朝毎朝うるせぇぞ涼太」
「あっ、おはよーっス幸男さん」
「…はよ」
「んじゃ、行ってくるっスね!」
「おーよ」
オレは毎朝幸男さんに会いに来ている。
挨拶だけ交わしてオレは学校に行く。
オレは幸男さんが好き。だから、毎日会いに来てる。
……今日は帰りにもあいに行こうかな。
漸く授業が終わり夕方になった。
帰ろうとするといつものように女の子達に囲まれてしまった。
今日は早く帰って幸男さんに会いたいんスけど…。
「キャー!」
「涼太くーん!」
「一緒に帰ろっ♪」
「ちょ、ちょーっと…通れないっスよみんな…」
「え…幸男さん…?」
やっと校門にたどり着いた時にオレが今一番会いたい人が見えた。
「…あっ、幸男さーん!!」
いる筈のない幸男さんの姿に目を疑ったが、オレが幸男さんを呼ぶと少し顔を歪めたので間違いなく本物だろう。
「オレに会いに来てくれたんスね!」
周りの女の子を素通りし、一目散に幸男さんに駆け寄った。
「違ぇーよ、真太郎の様子が気になって来ただけだ」
「真太郎っちなら今会議中っスよ?」
「知ってる」
「じゃあ一緒に帰りましょうよ、幸男さん」「………」
一緒に帰りたいと誘うとあからさまに嫌そうな顔をされた。
「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃないっすかΣ!!」
「……さっさと帰んぞ」
「やたっ! じゃあみんな、また明日っス!」
女の子達に声をかけると名残惜しそうな声を上げていたが今は気にならなかった。
幸男さんと一緒に帰れると思うとすごく嬉しかった。
「えへへ〜♪」
「んだよ」
「幸男さんと放課後デートだなんて嬉しすぎるっスよ♪」
「アホかっ!!」
バシィッ
「痛ッ! 痛いっス幸男さん…!」
「自業自得だ馬鹿野郎」
思ったことを正直に言うと殴られたが、それは最早日常茶飯事になっていた。
歩いていて会話がなくなった。
幸男さんは無言だし…。
無言が嫌でオレは口を開いた。
今まで何度も告げてきた言葉を。
「ねぇ幸男さん、オレと付き合ってください」
「………」
しかし、反応がない。
これはたぶん聞いてないな…。
「……って、聞いてるんスか? 幸男さん」
「あ? あー、いんじゃねぇの?」
この反応は確実に聞いてない。
「やった! じゃあ決まりっスね♪」
「…何がだ?」
「……やっぱり聞いてなかったんスね…」
「で、なんだよ」
「今オレ、付き合って下さいって言ったんスよ」
人の告白はちゃんと聞いてほしいスよね…。
オレがさっきの言葉を言うと幸男さんは嫌そうに顔を歪めた。
「………またかよ…」
「何度でも言うっスよ!」
「……はぁ、」
「漸く許可貰えたっスからね! 手ェ繋いでいいっスか? 幸男さんっ♪」
「っざけんな!」
ドカァッ
聞いていなかったとはいえ許可がもらえたのでそこに漬け込んでみることにした。
が、まぁ、やはり蹴られた。
「痛っつ…! だから痛いっスよ幸男さん!!」
「んな真っ昼間から公然で手なんか繋げっかよ!」
「それって二人きりだったらいいってことっスよね!?」
「…………お前さぁ…」
「何スか?」
「仮にもモデルなんだからよ、恋人が欲しいなら選り取りみどりだろうが」
「仮にもって…。それに、昔から言ってるデショ?」
呆れた顔をしながら幸男は言った。
この人はオレの言うこと信じてないんスかね?
オレは立ち止まるとハニカミながら昔から言っている言葉を告げた。
「オレは、幸男さんが大好きなんスよ」
「……バーカ」
幸男さんは呆れたように、でも少し微笑んでくれた。
それを見たオレは嬉しくて自然に笑顔になる。
いつか、幸男さんがオレを恋人だと認めてくれるまでオレは何度でも同じ言葉を繰り返すから。
だから、早く認めてほしいっス。
END