企画
□真太郎君の日常
1ページ/1ページ
「真ちゃーん!」
家を出ようとした途端、いつも聞こえるその声。
「和、毎朝うるさいのだよ」
「えー! 真ちゃんつれなーい!」
全く…中三にもなって何度言っても治らない。
いい加減落ち着きを持てばいいものを…。
和───和成とは産まれながらの隣人。
しかも同級生。
そのせいか、物心つく前から時間を共にしている。
家族を除いて一番と言ってもいいだろう。
オレのことを『真ちゃん』と呼ぶその男。
昔は当然だったそれが、最近は呼ばれる度に胸がざわつく。
…………何故かは解らない。
解らない、が……和成の笑う顔を見るとどうでもよくなる。
そんな気がするのだよ。
「今日は会議があるから遅れるなよ」
「あー、りょうかーい!
てか、一緒に行くんだから大丈夫じゃね?」
「そうだな」
学校でも基本和成と共に居る。
こんなに一緒に居ても気が楽なのは、恐らくコイツだけだろう。
むしろ、横に居ないなんて考えられない。
───不思議な感覚だ。
いつも通りに人事を尽くした放課後。
そろそろ会議に行かねばならないな。
「そろそろ行こっか、真ちゃん」
「わかったのだよ」
並列すると、何故か笑って立ち止まる和成。
「どうかしたのか?」
「なんでもねーよ! 行くよ、真ちゃん!」
尋ねるとそう言ってオレの手を引く。
そしてそのまま生徒会室へと進む。
「会長サマが遅れちゃダメだろ?」
「そんなことより手を離すのだよ」
「もーツンデレなんだからー!」
「ツンデレではないのだよ!」
まぁ、いつものことだから既に諦めているのだがな。
それに、容認しているのは…───
───不思議と悪い気はしないからだ。
END