企画
□幸男君の日常
1ページ/1ページ
「ゆっきおさーん!」
・・・
………はぁ、またアイツか。
「幸男さんってばーぁ!!」
「毎朝毎朝うるせぇぞ涼太」
「あっ、おはよーっス幸男さん」
「…はよ」
「んじゃ、行ってくるっスね!」
「おーよ」
アイツは毎朝オレの所に来る。
言うだけ言って、涼太は学校に行く。
………オレも講義に行く準備しねぇとな…。
講義が終わって、夕方。
何となく弟の真太郎が通う中学に寄ってみた。
すると、校舎の方から黄色い声がオレの耳に届く。
「キャー!」
「涼太くーん!」
「一緒に帰ろっ♪」
「ちょ、ちょーっと…通れないっスよみんな…」
大量の女子に囲まれて出てきたのは、想像通りというかなんというか…。
「…あっ、幸男さーん!!」
…うげ…気付きやがった…。
「オレに会いに来てくれたんスね!」
周りの女子を素通りし、一目散にやってくる。
「違ぇーよ、真太郎の様子が気になって来ただけだ」
「真太郎っちなら今会議中っスよ?」
「知ってる」
「じゃあ一緒に帰りましょうよ、幸男さん」
「………」
「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃないっすかΣ!!」
「……さっさと帰んぞ」
「やたっ! じゃあみんな、また明日っス!」
名残惜しそうな声を上げ、女子たちは涼太を見送る。
……なるべくオレはその顔をみない。
だってすっげぇ睨まれてそうだろ?
「えへへ〜♪」
「んだよ」
「幸男さんと放課後デートだなんて嬉しすぎるっスよ♪」
「アホかっ!!」
バシィッ
「痛ッ! 痛いっス幸男さん…!」
「自業自得だ馬鹿野郎」
思わず殴るが、それは最早日常茶飯事。
オレは大学生で涼太はまだ中一のハズなのに、ほぼ変わらない背丈。
というかオレより7cm小さいだけ。
中学生で170越えとかどんだけだよ、たっく…。
「……って、聞いてるんスか? 幸男さん」
「あ? あー、いんじゃねぇの?」
「やった! じゃあ決まりっスね♪」
「…何がだ?」
「……やっぱり聞いてなかったんスね…」
「で、なんだよ」
「今オレ、付き合って下さいって言ったんスよ」
「………またかよ…」
「何度でも言うっスよ!」
「……はぁ、」
「漸く許可貰えたっスからね! 手ェ繋いでいいっスか? 幸男さんっ♪」
「っざけんな!」
ドカァッ
「痛っつ…! だから痛いっスよ幸男さん!!」
「んな真っ昼間から公然で手なんか繋げっかよ!」
「それって二人きりだったらいいってことっスよね!?」
「…………お前さぁ…」
「何スか?」
「仮にもモデルなんだからよ、恋人が欲しいなら選り取りみどりだろうが」
「仮にもって…。それに、昔から言ってるデショ?」
ふと、涼太は立ち止まる。
そして、ハニカミながらいいのけた。
「オレは、幸男さんが大好きなんスよ」
………んだよこのイケメンは。
漫画の中の王子様かっての。
「……バーカ」
涼太の相変わらずさに思わずオレの頬も緩む。
それを見た涼太は更に笑顔になる。
オレなんかの何処かいいかなんて解らねぇ。
けど、
完全に拒絶出来ない程には気に入っちまってる、ってことだな。
END