企画

□幸男君の日常
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「ゆっきおさーん!」

        ・・・
………はぁ、またアイツか。


「幸男さんってばーぁ!!」
「毎朝毎朝うるせぇぞ涼太」
「あっ、おはよーっス幸男さん」
「…はよ」
「んじゃ、行ってくるっスね!」
「おーよ」


アイツは毎朝オレの所に来る。

言うだけ言って、涼太は学校に行く。

………オレも講義に行く準備しねぇとな…。













講義が終わって、夕方。

何となく弟の真太郎が通う中学に寄ってみた。

すると、校舎の方から黄色い声がオレの耳に届く。

「キャー!」
「涼太くーん!」
「一緒に帰ろっ♪」
「ちょ、ちょーっと…通れないっスよみんな…」

大量の女子に囲まれて出てきたのは、想像通りというかなんというか…。

「…あっ、幸男さーん!!」

…うげ…気付きやがった…。

「オレに会いに来てくれたんスね!」

周りの女子を素通りし、一目散にやってくる。

「違ぇーよ、真太郎の様子が気になって来ただけだ」
「真太郎っちなら今会議中っスよ?」
「知ってる」
「じゃあ一緒に帰りましょうよ、幸男さん」
「………」
「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃないっすかΣ!!」
「……さっさと帰んぞ」
「やたっ! じゃあみんな、また明日っス!」

名残惜しそうな声を上げ、女子たちは涼太を見送る。

……なるべくオレはその顔をみない。

だってすっげぇ睨まれてそうだろ?

「えへへ〜♪」
「んだよ」
「幸男さんと放課後デートだなんて嬉しすぎるっスよ♪」
「アホかっ!!」

バシィッ

「痛ッ! 痛いっス幸男さん…!」
「自業自得だ馬鹿野郎」

思わず殴るが、それは最早日常茶飯事。

オレは大学生で涼太はまだ中一のハズなのに、ほぼ変わらない背丈。

というかオレより7cm小さいだけ。

中学生で170越えとかどんだけだよ、たっく…。

「……って、聞いてるんスか? 幸男さん」
「あ? あー、いんじゃねぇの?」
「やった! じゃあ決まりっスね♪」
「…何がだ?」
「……やっぱり聞いてなかったんスね…」
「で、なんだよ」
「今オレ、付き合って下さいって言ったんスよ」
「………またかよ…」
「何度でも言うっスよ!」
「……はぁ、」
「漸く許可貰えたっスからね! 手ェ繋いでいいっスか? 幸男さんっ♪」
「っざけんな!」

ドカァッ

「痛っつ…! だから痛いっスよ幸男さん!!」
「んな真っ昼間から公然で手なんか繋げっかよ!」
「それって二人きりだったらいいってことっスよね!?」
「…………お前さぁ…」
「何スか?」
「仮にもモデルなんだからよ、恋人が欲しいなら選り取りみどりだろうが」
「仮にもって…。それに、昔から言ってるデショ?」

ふと、涼太は立ち止まる。

そして、ハニカミながらいいのけた。





「オレは、幸男さんが大好きなんスよ」





………んだよこのイケメンは。

漫画の中の王子様かっての。

「……バーカ」

涼太の相変わらずさに思わずオレの頬も緩む。

それを見た涼太は更に笑顔になる。






オレなんかの何処かいいかなんて解らねぇ。








けど、




















完全に拒絶出来ない程には気に入っちまってる、ってことだな。










END


 

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