ペット

□冷たい日
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……冷たい


容赦なく天から滴が落ちる

曇天な空であたりは薄暗い


自分より何倍も大きいヒトを眺める

汚いモノを蔑むような視線
同情の眼差し
あるいは、見もしないモノもいる


(…人は…こんなにも…
……醜いのだな…)


目線が違うとこんなにも変わる世界

俺は一週間前まで
"手塚国光"と名を持った人だった


ある日
外の固く冷たいところに寝ていた
自分の目線はいつもより大分下で
いつもより身軽で歩きづらかった
のどが渇き近くの水道に近づいた

たまっていた水面に顔を映した



「…、……ッ!!?」


小さな頭部。
くりくりとした大きな目。
さらさらとした毛並み。
左右に広がるヒゲ。
ピクピクと動く獣耳。


俺は猫の姿になっていた






それからは
いろいろと大変な生活だった
優しいヒトもいれば
乱暴なヒトもいた









(もう…
…死んでしまうのだろうか…)



本気でそう思った


バシャバシャと
急いだ足音が聞こえた


雨はなお降り注ぐ












意識は沈んでいった






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