短い夢物語5
□そのひとみにボクをうつして
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なんでこんなにも胸が苦しいんだろう。
「お兄様。」
「なんだい?」
学校に居たころとは違う少し冷めた笑みを浮かべた優姫ちゃんは、スルリと枢様の腕に腕を絡める。僕はそれを見て呆れたように溜息を吐く。
「藍堂・・・どうかした?」
「・・・別に、なんでもないです。」
僕の返事に枢様はクスリと返事を返す。この人は、わかっていて僕にそう尋ねているんだ。
「優姫・・・そろそろ勉強の時間だろう?」
「・・・お兄様と一緒がいい。」
「ダメ。藍堂、後はよろしく。」
「はい。」
優姫ちゃんの頭を一撫でして、枢様は部屋からでていく。残ったのは、枢様がでていったドアを見つめる優姫ちゃんと、そんな優姫ちゃんを見つめる僕。ズキリ、胸が痛む。
「・・・。」
「・・・。」
僕らを支配するのは沈黙。何も言わない。何も言えない。優姫ちゃんは僕の方を見ようとはしてくれない。
あぁ、どうして。
「・・・お願いだから、」
「え?」
僕の小さなつぶやきに反応して優姫ちゃんが僕を見る。やっと絡まった視線に、僕は内心安堵した。
「・・・なんでもないよ。」
そのひとみにボクをうつして
叶うことのない願いだってわかってる。だからせめて、二人っきりのときは、ボクを、ボクだけを、
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