短い夢物語6
□ニコニコ笑顔の向こう側
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「―――・・・ん・・・?」
暫くしてから、女はゆっくりと起き上がる。キョロキョロと辺りを見回し、俺を見つけるとヘラリと笑った。
「カッシェルの旦那、無事でしたか!」
「・・・。」
「いやーびっくりしやしたねェ。まさかいきなり斬りつけられるとは思いやせんでした。」
「・・・。」
斬られた部分に手を当て、女は笑う。
「・・・。」
なんでだ、なんでなんだ。どうして、笑ってられるんだ。一般人だろ、恐くなかったのか。
「・・・旦那?」
「・・・。」
「あ、カッシェルの旦那、ビビってるんスね!」
「・・・そんなわけないだろう。」
「!」
女と久々に交わした会話。女は俺が喋ったのに驚くと、嬉しそうに笑う。ドキリ、何故か高鳴った心音はきっと気のせいだ。
「この怪我の手当、してくれたのって旦那ッスよねェ?ありがとうございやす。」
「・・・お前のせいで、治りかけてた傷がまた開いた。つけられていなかったことに気付かなかったお前のせいだ。あの男は殺したが、またあの男のような人間が現れるだろう。」
「へ?」
「だが、お前の作る飯は美味い。」
「!」
「傷もまだ治ってない。暫く動けそうにない。・・・また変な奴が現れたら、仕方ないから俺が守ってやる。原因は俺だしな。」
遠回しに、俺はここに居てやる、そう言って女へと目を向ければ、女は今まで以上に嬉しそうに笑っていた。ニコニコと、幸せそうに。
「そういやァ、あっしの名前、まだ言ってやせんでしたよねェ?」
そこまで言われて名前を知らなかったことに気付く。女は口を開くと、にっこりと笑った。
「あっしの名前は―――。」
ニコニコ笑顔の向こう側
(カッシェルの旦那ァ!今日は兎見つけてきやしたァ!)
(久々の肉・・・でかしたぞ!)
(エヘヘー)
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