短い夢物語6

□ニコニコ笑顔の向こう側
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グーキュルルルル・・・。

相も変わらず鳴り響く腹。この女の家で生活してから、もう二週間。傷も少しずつ良くなり、今は少しだけなら歩けるようになった。

「カッシェルの旦那ァ!見て下さいよこのクマ!今日はお肉ッスよー!」

ズルズルと引きずりながらクマの死体を運ぶ女に、内心良くやった、と思う。口にはださないが。

「今からお肉焼きやすんで、もうちょっと待ってて下さいねー。」

よいしょ、そう言ってクマを運ぶ。俺はそれをただ眺めていた。





が、





「!う、あっ・・・!!」

「!」

ざくり、響いたのは肉が斬れる生々しい音。鼻孔を擽るのは最近嗅いでいなかった赤色の血。

それは決してクマの肉でも血でもなく、ニコニコと何時も笑っている、あの女のモノ。

目の前で床に倒れる女を見、その後ろにいた男に目をやった。

「幽幻のカッシェル、だな?」

「・・・俺を殺しにきたのか。」

久々に吐いた言葉はかすれてしまったが、声は低かった。少し殺気を飛ばせば、女を切った男はニヤリと笑う。そして、勢い良く刃物を振り回した。

俺はそれを避け、部屋の中を見回し武器になりそうなモノを探す。だが、この家は貧乏。俺の武器は、ない。女が俺を見つけた場所に置いてきたそうだ。武器は・・・見当たらない。

俺は小さく舌打ちする。と、足にヌルッとした感触。















あの、女の血だ。















「・・・。」

気絶でもしているのだろう。血を床に広げる女は、今にも死んでしまいそうだ。このままじゃ、いけない。

俺はそれをチラリと確認して、男の背後に回った。無理に動き回ったせいで身体中が悲鳴をあげている。

「!」

「―――さよなら、だ。」

シュトン、首裏に手刀をあて、男を気絶させる。武器を取り上げ、俺はそれを振りあげた。

ざくり、クマでもない、女でもない、肉を斬る音が響いた。






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