短い夢物語6
□別れの花が落ちていく
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ひらひらと落ちていくのは桜。それは学校でも花を咲かせ、学校の敷地内はピンクで染まる。そんななか、体育館では桜とは不釣り合いな校歌が流れていた。
今日は卒業式。彼処には、剣道部に所属しているマヨネーズ馬鹿がいるのだろう。
「・・・土方先輩・・・。」
私は体育館から流れてくる校歌を聞きながら、大好きな先輩の名前を呟く。
土方先輩も、今日で居なくなってしまう。木刀を振り回す先輩に一目惚れした私は、少しでも長く先輩と居たくて大変なマネージャー業をこなしてきたのに。
「・・・はぁ。」
桜の木の下で私はぼんやりと空を眺めた。校歌よりも不釣り合いな校長の声が聞こえてくる。もう少ししたら、彼処からは卒業した土方先輩が姿を現すんだ。
じわり、目頭が滲む。溢れる、零れそうな程に。
このまま泣いてしまおうか。そしたら、気が楽になるんじゃないだろうか。
よし、泣こう・・・そう思ってたのに。
「何してんだ。」
「・・・ひ、じかた・・・せんぱ・・・?」
いきなり現れた先輩に涙も引っ込む。アレ?先輩、今卒業式の最中じゃ?
慌てて体育館を見ても、誰も出てくる気配はない。それどころかまだ校長の声が聞こえる。
「泣いてんのか?」
「な、いてないです・・・!」
引っ込んだ涙も、そう言われれば何故か溢れてくる。止まれ、止まれ止まれ。
手でゴシゴシと拭っても涙は止まらない。それどころか溢れてくる。
「・・・ほら。」
ぽふん、土方先輩に引き寄せられ、気づけば腕の中。
ポンポン、と頭を撫でられる。
「せ、先輩!?」
いきなりのことに顔に熱がたまる。なんでなんでなんで?
「泣きたいなら、泣け。」
胸を貸してやるから、そう言われては泣くしかないじゃないですか。
溢れてくる涙を止めずに、私はすっきりするまで泣き続けた。その間、土方先輩はずっと頭を撫でてくれていた。
校長の声が終わりを告げる。桜の花が地面に落ちる。
さようなら、先輩。
心の中で、別れの挨拶をした。
別れの花が落ちていく
(うわぁんせんぱーい!)
(・・・ちょ、鼻水つけんな!)
(ズビー!)
(こらぁ!)
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