短い夢物語6
□あの方より先に出会っていたら
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もうすぐ、一年が経って春が来る。3月になれば、三年生の男女はそわそわしてくる。別れの時だからだ。勿論それは、僕も例外ではなく。
「〜〜〜うぅー!」
「・・・どうした英。」
暁が変なモノを見る目で僕を見てくる。そこまで変な動きもしてないし、変な事も言ってないと思うんだけど・・・。
「・・・もしかして、風紀委員さん?」
「あ、そっか。だから藍堂はそわそわしてるんだね?」
納得したような一条に頷く支葵。・・・事実だから否定はしないけれど、この会話を枢様に聞かれていたら・・・そう思うと、冷や汗が出る。
しかし、枢様は今、優姫ちゃんに会いに行っている。そう考えると安心するが少し複雑だ。
「そんなに風紀委員さんのこと、好きなの?」
「別にいいだろ!なんでそんなこと聞くんだよ!」
「気になった、から。」
支葵の言葉に僕は溜め息を吐く。なんだか彼等と優姫ちゃんの話をすると疲れるのは僕だけだろうか。
「そういえば、藍堂はしないの?
告白。」
「!」
一条の言葉に肩を揺らす。そりゃ、告白はしたい。けど、けれど・・・。
「・・・告白なんて、出来るわけないだろ・・・。」
優姫ちゃんは枢様のことが好きだし、それは枢様だって同じだ。結果なんて見えているのに、告白なんて、・・・出来るわけがない。
「・・・もし、」
もし、あの方よりも先に、彼女に出会っていたら。
もしかしたら、優姫ちゃんは僕のことを見てくれついたのかな。
「・・・。」
「・・・。」
黙ってしまった僕の頭に、暁が慰めるかのように手を置いた。
あの方より先に出会っていたら
(そんなこと、)(有り得ないのに)
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