短篇集

□ちょこれいとぱにっく!! 男子編☆
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時は西暦2071年、二月十三日

転入生、ミーナが現れる五か月ほど前のこと

SSO男子寮、談話室にて―




「今年も、ついにこの週間が訪れてしまったね……」

「ああ……」



イクが額を突き合わせ、話し合いを行っている

重大な機密が刻まれた、大組織への潜入調査の果てに入手した未解読の暗号文についてでも語っているかのような

どこまでも、真剣な表情で―



『指揮棒部隊、二月戦争異聞 前編』





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が、次の瞬間には、その初心者が張り過ぎたヴァイオリンの弓のごとくピンと張りつめている生ぬるい空気を、クレナイが一刀両断する


「テメエ等な、何でそこまで真剣な顔で、作戦会議めいたことをやっているんだ…? たかがバレンタインデーだろう」

「たかだかバレンタインデー、ですって!!?」


クレナイのなにげない一言に、談話室の机に突っ伏して眠りこけていたフーが、突然ガバッと顔を上げて即座に過剰過ぎる反応を示した


「テメエ等… そういうシリアスな空気は普段の『特別課題(ミッション)』で発揮しろ!! 毎年毎年、女子に踊らされてるんじゃねえよ!! つーかフー、テメエもか!!」


めずらしく口数多くツッコミを入れるクレナイに、フーは素直に頭を下げる


「すいません。ガラにもなく感情的になって… 少々、昨年の悪夢が頭を過ったと言いますか…」


そう言って、ジトッとした目でコタローの方に目線をやるフー

そこにあるのは、正真正銘、本物の殺気……


それまで知らんふりを決め込んで、ひたすら雑誌に目をやっていたコタローも、背後から感じるその視線のあまりの迫力に、ビクリと肩を震わせた


「サクライ、頼むからさあ… 今日から二週間ぐらい部屋交代してくんない…? もしくは、交代しなくてもいいから、とりあえず匿ってくれよー!!」

「嫌だ、断る。サクライはいつでも持って帰ってもらって構わないが、お前は来るな。連日、わけの解からん女連中からの荷物が届けられてくるのは、俺だって迷惑だ」

「ていうか、毎年毎年、いったいどうやって『機関』のセキュリティーををごまかしてるのかな〜? あの娘たちって。それに、あの執念もすっごいよね〜! …いったい、いつも何してるの? コター…?」


のんびりした調子で訊ねてくるサクライに、コタローは、両腕をぶんぶんと振って答える


「なっ! 別に、特別なことは何もしてないよ! フツーに遊んだり、喋ったりしてるだけだって!! 何もヘンなことは…」
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