竜退治

□緑の歌姫と野郎共の喧嘩風景
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トワが私の部屋を後にしてから、二時間ほど経っただろうか?

奇跡的に今まで壊れずになんとか時を刻み続けている私のお気に入りの腕時計は、もうすぐ午後8時をまわるところだと示していた


ムラクモの人達の言葉に甘えてもう一度じっくり眠ろうかとも思ったのだけど、頭のなかがごちゃごちゃしていてどうしようもなく目が冴えてしまう

…眠れない

クオンの部屋を訪ねてやろうかとも一瞬本気で考えたのだけれど、ああ言ってしまった手前なんとなく行きたくない

きっと、なにかに負けたみたいな気分になるから


そんなことを思いながらベッドの上で独りぼっちで悶々としていると

不意に、遠慮がちな小さなノックの音が聞こえてきた


てっきりクオンが来たのだと思い込んで、なに? いるわよ! と返事をすると


「13班の… タイキだけど、入ってもいいかい?」


予想していなかった、クオンのそれとは明らかに違う声が聞こえてきた


「…!! あっ… はい。開いています。どうぞ!」


あわててベッドから身体を起こし、私は部屋のドアを開ける


「ごめんね。起こしちゃったかい?」


訪ねてきたクロヌマを部屋に招きいれると、彼は気を使ってくれたのか、私に問いかけてきた


「あっ、いえ。ちょうど眠れなかったところだったので… ええっと… クロヌマ、さん…?」

「おっ、よく覚えててくれたね。でも、それじゃよそよそしいだろ? 呼び捨てにしてくれてかまわねえよ」


気さくにそう言われて、私は一瞬返答に迷う

呼び捨てで… いいのだろうか?

10歳ぐらい…? いや、そこまでではないような気がするけれど、けっこう年上なように見えるし…

でも、あまり壁を作るようなことはしたくない

―これから先、私も『ムラクモ13班』の一員になるのだから

もう、その覚悟を決めんだ


「えっと… じゃあ、クロヌマ…?」


おそるおそる言ってみると、なぜか彼は、すごく微妙な表情をした

それでも、すぐにおどけた調子で言って、笑う


「おおっと、そうきたか! ちょっと予想外だったな… まあそれでいいよ。好きに呼んでいいっつったのはオレだしな」
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