竜退治

□アルビノ君と班長さん
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…ックチュン!


「……健康管理がなってない」


小さなくしゃみにまでいちいち憎まれ口を叩く男。アヤ

こんなとるに足りない他人の動きに反応を示すなんて… どうやら、今日の彼はそうとうに機嫌がいいらしい


「安心してください。別に風邪を患っているわけではないようですから。…そうですねえ。どこかで、僕の噂話でも花開いている真っ最中なんじゃないですか? だいたい。どうせ貴方にはうつらないでしょうに」


この軽く人間離れした鉄人が病むところなど、到底想像できない

軽く冗談めかした口調で、僕はそう言い返した


「チッ… いちいち面倒くさいガキだ……」

          ・・・・・・
「聞こえていますよ、まだ未成年の年長者さん? だいたい、健康について貴方にどうこう言われたくありませんねえ… 貴方が今くわえているそれは、一体何なんです?」



もう十月に差し掛かるところだというのに開け放たれた窓べりに腰かけるアヤがくわえているものは、紛れもなく煙管(キセル)

この物資の極限に少ない中で意地でも煙草を掻き集めてくるタイキの執念もすごいが、まったくこの人もこの人だ… 煙管なんて、一体どこから拾ってきたのやら


しかし、てっきり彼は嫌煙家だとばかり思っていた。それが彼と僕との恐らく唯一の共通点だとばかり思っていたのに… なんだか裏切られたような気分になる

僕の非難の視線にも彼は全く動じる様子もなく、軽く鼻を鳴らした


「フンッ… 人間嘘発見機じゃあるまいし、俺が好き好んで有毒な煙を吸い込み自らの肺を汚すような馬鹿に見えるか? 女顔」


………ハア…


「常々言っている事ですが… 次に僕のことを『女顔』などと呼んだら、その時は全力でぶっ飛ばしますよ? …タイキのほうも、やめませんかその呼び方?」


ため息をつきたいのを何とか堪え、なによりもまず第一にそこに突っ込む

まあ、今更この男になんと呼ばれようとも、タイキ本人は一切気にしないか…


「訂正しよう。あの腹黒じゃあるまいし…… これで満足か?」


―おやおや。わざわざ訂正に応じるとは、予想外ですねえ…


今夜のアヤは、本当に気持ちが悪いほど機嫌がいい


「それもちょっと待ってください。本人はともかく、キリノやクオンあたりに聞かれたら、きっと睨まれますよ?」

「キリノは問題外として、それはないな。…腹黒のクロヌマ。もともとは狙撃手が言い出したことだ」

「……えっ?」
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