竜退治

□アルビノ君と班長さん
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「菓子の原料となるミントの類がほぼ無傷で倉庫に取り残されていた。たいした食料にもならないため、無能な自衛隊の連中にも手をつけられずにいたのだろう。まあ確かに腹の足しには到底ならんが、嗜好品としては最良だろう? 少なくとも煙草のように苦くはない」


はあ……


「最高だろう? と言われましても」


わざわざ煙管まで引っ張り出してきて、そんな清浄な煙を吐き出しながらドヤ顔されても反応に困る

煙管を拾ったから使ってみたかったけど、ためしに普通に煙草で試してみたら苦くて吸えたもんじゃなかったから、ヤケクソで手元にあった葉っぱに火をつけて吸ってみたら意外といけたからびっくりしてテンションが上がった、というのがおそらく真相だろうに

まあ、彼の機嫌がいいのは、さすがにそれだけが理由ではないだろう


一番の理由はおそらく、あのセーラー服の少女か……


「そういえばアヤ… ドラゴンを完全に殲滅したから自由行動した、と言いましたね? 最後の一匹を狩ったのはハオト ハイネだったと聞いていますが、彼女を保護して都庁に帰還してから、工場まで遠出するような時間はなかったはずでは?」

「ハオト流のお嬢を保護した場所まではあの腹黒の運転で出向いた。お嬢は、精神的に疲労していて気を失っただけで軽傷だった」


……つまり、ハイネを保護したその足で、タイキに無理矢理運転させて自分の趣味に走った、と


「もともとあの工場地帯には、食料物資を探しに行くという名目で、めいめいの嗜好品を漁りに寄る約束をしていたんだ。たかだか子猫一匹拾ったぐらいでこの俺が自分の予定を変更するはずがないだろうが」

「…………………」


この男が、解らない……

めったに他人に興味を持たない彼にしてはめずらしく、あの少女には興味以上の強いなにかを示しているように見えたのだけど… この言い草だ。僕の気のせいだったのだろうか?


……いや、そんなはずはない

タイキやクオンも、まったく言葉や表情には出していないものの、なにかを隠している様子だった

いや、隠している、というと語弊があるか

なにかに気付いていて、その意味は解っているのにあえて何も言わない。…そんな雰囲気

時々落ち着かない様子で彼女の灰色の瞳を見つめるキリノの表情には、特に違和感があった


「まさか一目ぼれ… はないでしょうし」

「ありえんな。キリノはああ見えて平均を大幅に超えたバストサイズを誇るような熟女が好みだ」

「ずいぶんと例えが具体的ですね。…ていうか、僕の考えを読まないでください」


こんな小さな独り言で……


「それぐらい読めないでどうする。 …そういえば、腹黒はどうした?」
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