竜退治
□アルビノ君と班長さん
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おもわず、瞬時に聞き返した
「『クロ』って… 本当にそういう意味でだったんですか? 単純に、苗字から最初の二文字を取ったのではなく…? ついでに言うと、クオンのことを『狙撃手』と呼ぶのもやめて欲しいんですが。紛らわしいので。自衛隊の狙撃班の方々と行動を共にするときなどは特に」
「うるさい却下だ。一度にいろいろ喋るな。…まあもしかすると、あだ名を付けた当の本人はいまいましいだけの当時の記憶など都合よく脳内から消し去っているかもしれないがな」
今度は即刻却下か。しかしまさか、タイキがクオンに『クロ』と呼ばれているのを最初に聞いたときに、僕が連想してしまったまさにそのままが、本当に本来の由来だったとは
でも意外だ。なんとなく、クオンはタイキとは、最初からある程度上手くやっていたものと思っていた
今の話を聞く限りでは、出会って最初の頃の三人の仲は、かなり険悪だったということにならないか……
彼等
僕と13班の付き合いは、まだほんの二ヵ月足らず。びっくりするような思い出語りはまだまだ聞けそうだ
「と、いうことは… 貴方の『アヤ』という愛称にも、なにか意味が……?」
「……………………」
文字通り、竜も恐れる鬼のような視線で睨まれる。しかも無言のままで
いくらなんでも、この人本人に直接訊ねてみたのは無謀だったか
だけど… この反応は肯定と受け取っていいだろう。意味がないなら、『馬鹿が』の一言かシカトで済んだはず
と、そこで僕は、そもそも最初に自分が話そうとしていた事を思い出した
「ああ、本題を忘れてしまうところでした。その煙管……」
……あれ?
これ以上この部屋に喫煙者を増やすのはどうか遠慮していただけませんか室内の臭いも気になることですし。ぐらいのことを言おうとして、僕は首をかしげた
「…タバコの臭い、しませんね? それは、一体……?」
むしろなにか… お口に爽やかな匂いがするような気が
その言葉に、ほう? と、満足そうに笑うアヤ
…うわあ、しまった。何かスイッチ、入れてしまいましたかねえ……?
「よく気がついたな。前にチョコバーの在庫が切れたとかで荒れていたアオイに引きずられて、荒れ果てた製菓工場まで食料物資を漁りにいったことがあっただろう? ……ああ、あの頃にはまだ、貴様はここにはいなかったか。とにかくだ。あの時は、小物だがドラゴンがうようよしているから、などというくだらぬ理由ですぐに帰還を命じられてしまったため奥まで詳しく探っている時間がなかったのだが… 東京に蔓延っていたドラゴンどもを完全に殲滅した今、この俺様が行動を制限されなければならない道理はどこにもあるまいと思ってな。もう一度詳しく調べに出向いたところ、まあ出るわ出るわ」
「……なにがですか?」
話の中に出てきた『アオイ』という人のことは知らないけれど
ちょっと興味が出てきた僕は、おもわず話の先を促す