BOOK-T&B-

□淡い頃の話
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「大事な話しすっからさ、笑わないで聞いてくれよ?」


僕の相棒はめずらしくまじめな顔をしていた。
いつになく真剣な顔をしていたので、なんだか可笑しくなってその大事な話を聞く前に笑ってしまいそうになる。



「僕がいつあなたの話を真面目に聞かなかったことがありますか?」

「ま、まぁないけどさ…」

彼とヒーロー界初のバディヒーローとなり、それなりに経験を積んできたつもりだ。
もう昔のような感情を抱くこともなくなり、彼を相棒として、一人の人間として信頼している。



彼は「よし、大丈夫だ」「お前ならやれるぞ、虎徹」とかわけのわからないことをぶつぶつと呟いている。
…このおじさんはどうしたというのだろう。


意を決したように口を開いた。







「俺、鏑木虎徹は……バーナビーを愛しています」










「は?」

彼の口から放たれた言葉は想像を越え、いや常識すらも越えた言葉だった。

「あい、しています?」

何を言っているか意味がわからずオウムのようにそのまま繰り返す。


「お前のこと好きになっちまったみたいなんだ、俺」

相棒はまっすぐに僕を見つめる。

すごく真剣に。
あまりに熱を帯びた視線に思わず視線を外してしまった。




「いや、だって僕は男ですし…」
「関係ねえ」
「あなた奥さんだって、娘さんだって…」
「……あいつらは別なんだ。あいつらは愛とかそうゆうのを越えた存在なんだよ」

僕の問いにすぐに返答する。



「だから俺のそばにいてくれ。バニー」

「は、あ、えっ、あ…」

どう答えていいかわからず、狼狽えていると彼の腕がこちらに伸びてきた。

近づいてきた手にびくっと体を震わすと、その大きな手はくしゃくしゃと僕の頭を撫でる。

虎徹さんにされること全てが嫌ではない。寧ろこの優しく撫でるても心地よく感じてしまう。


これは、この感情は何なんだ?










「ま、これからバニーちゃんの方からすきですぅーー!虎徹さぁんってなるようにしてやるからさ!」

虎徹はいつもの笑顔で、余裕綽々な態度でバーナビーの綺麗な金色の髪を撫で続ける。





「な!!そんなこと死んでも、いや生まれ変わっても言いません!!!」


「あ、なに?生まれ変わってもまた俺と出会ってくれるわけ?おじさんうれしいーなー」

「はぁ?!あなた頭おかしいんじゃないんですか?!!もう、帰ります!!!」


「まてよー、バニー!怒んなってー。うまい寿司屋見つけたから食って帰ろうぜー」

「……SUSHIですか?し、仕方ない。あなたの奢りならいきましょう」

「食いもんでつれた。ほんとかわいい兎ちゃんだなー」

「ーーっ!!ほら行きますよ!おじさん!!」



ばたばたと部屋を出る二人。



「なぁに?あれ?」
「俺達に気づかなかったみたいだな」




そう、実はあの二人が話していたのは男子ロッカー。
まだ奥で着替えていた他のヒーローがいたのだ。

「うふ。これからが楽しみねぇ」



バーナビーの苦難はまだ始まったばかりだ。

fin,

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