魔法少女リリカルなのはStrikerS〜氷河の剣〜

□プロローグ〜時空管理局入局
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僕の両親は、僕が物心付く前に……小さなペンダントを一つ残して死んでしまった。

身寄りの無かった僕は、親戚のおじさんに引き取られた。

僕の両親は強くて優しい立派な魔導師だったって、たくさんの人を守るために戦って命を落したんだって、おじさんに教わった。

顔もよく覚えていなかったけど……そんな両親は僕の誇りだった。

いつか、そんな両親みたいに誰かを守れる人になろう……幼心にそう思ってた。

……両親が……お父さんとお母さんが……『死んだ』んじゃなく『殺された』って知るまでは……

……それを初めて知ったのは、4歳の頃だった。

物心がつき始めたばかりの頃……偶然におじさんが夜、玄関で誰かと話しているのを聞いた。

「何度も言ったはずだ! あの子とアンタを会わせる気はない!」

「すみません……でも、一言だけでも謝罪を!」

ドアの隙間からそっと覗くと、そこには茶色い髪の女の人が居た。

首の後ろ辺りで髪を揃えていたその人は、何度も頭を下げながらおじさんに謝っていた。

「謝罪して何になる! アンタが謝れば殺されたあの子の両親が帰ってくるのか!」

「そ、それは……」

その言葉の意味を理解するまで、少し時間がかかった……今まで見た事も無い様な、怒った表情のおじさん。

感情のままに告げたその言葉……理解、したくなかった。

……殺された? お父さんと、お母さんが……この人に……

「……なにが……『優秀な魔導師達により、一年前の闇の書事件は死者無く解決された』だ!」

「……」

……闇の書?

おじさんが続けた言葉にはよく分からない単語も多かった。

だけど、自然と頭が何かを理解し目に力が籠っていくのを感じる。

「『管理外世界の住人を庇って死んだ』アイツ等は……本局のメンツの為にもみ消された!」

「……あの方々の死の責任は、全部私にあります」

「それを自覚しているなら、さっさと帰れ! 何度来ようと、何度謝られようとお前と! あの守護騎士共を許す気はない!」

「……すみません……また、来ます」

……そこまで話を聞き、僕は少し開けていたドアを静かに閉じて部屋に戻る。

頭の中には訳のわからない感情が渦巻いていた……今まで信じていた物がぐちゃぐちゃに踏みつぶされた様な、どうしようもなく不快な想いと沸き上がってくる得体のしれない感情……

それが何かはまだ分からなかった……ただ、一つだけ心に誓った事があった。

……あの女の顔は絶対に忘れない……アイツが……お父さんと、お母さんを……











――1年後――


別れというのは急にやってくるもので……

優しかったおじさんは急病で他界し、おじさん以外に身寄りもいなかった僕は、小さな孤児院へ引き取られた。

おじさんが死んだのは、凄く悲しかった……だけど、それ以上に僕の心には憎しみがあった。

一年前にはまだはっきりとしなかった感情……自分の内に渦巻く、強い憎しみ……

偶然おじさん達の会話を覗いた後、おじさんを問い詰めて教えてもらった。両親の死の真相……

2年前の闇の書事件と呼ばれる事件が第97管理外世界で起こったらしい。

……その事件のみでは、死者はいないとされているけど……

闇の書を追って管理外世界『地球』へ行っていた両親は、闇の書から生まれた怪物の攻撃から……現地の人たちを庇って亡くなったらしい……

そして、その怪物が生まれる原因だったのが……八神はやてとその守護騎士……

闇の書がどうだとか、執務官という仕事についていた両親の事とか、分からない事も多かった。

だけど、一つだけ確かな事は……おじさんが口を開くたびに立派だったと言っていた両親を殺したのも、僕が今こうして普通の子達とは違う生活をしているのも……原因となった事件があって、それを引き起こした奴等が居る。

それを理解した瞬間から、僕の心には一つの暗い決意が宿った……

そいつらを……殺す……父さんと母さんを殺して、今も平然と生きているそいつらを……絶対に……







心の中に暗い感情を宿しながら、僕は流れる日々に身を任せていた。

心の中の憎しみは日に日に強くなっていくのに、それをどうすれば解消できるか……手段は思い浮かばない。

八神はやての顔は知っている……だけど他の奴等の顔も名前も分からないし、今の僕が正面から殺そうとしても……相手は大人、どうする事も出来ない。

だから先ずは情報と力がいる……そう思いながら、周りの子達と交流することなく静かに孤児院での生活を続けた。

……孤児院に引き取られて数ヶ月が経った頃、僕の事を引き取りたいと言う人がいるらしく……会う事になった。

少しの緊張はあったけど、いずれ孤児院は出なくてはいけないし……引き取ってもらえるなら幸せな事だと思っていた。

だけど応接室に入った僕は、そこにいた人物を見て驚愕のままに静止する。

大きなテーブルのある応接用の広い部屋……そこにいたのは……

「初めましてリン君。私の名前は……八神はやて……よろしくね」


この一年間頭に思い浮かべ続けていた……唯一顔を知る憎しみの対象……


……両親を殺した……憎い仇だった……

















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という訳で氷河の剣の第一話を移転させました。

内容も少々加筆しております。

この時点ではかなり闇落ち方向に進んでいますが、こちらの話は暗くはならないので早い段階で解決する予定です。

良くも悪くもこの主人公は小さな子供……感情は激しくも純粋で、変わりやすいです。
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