魔法少女リリカルなのはStrikerS〜孤独の歌〜

□共通ルート五十一話〜六十話
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第五十一話「疑念と保護と二人の再会A?」









今の関係を維持する事を選んだ俺とチンク……

一人何かをたくらむ、スカリエッティ……

……

俺の知らない所で、何かが始まろうとしていた。



魔法少女リリカルなのはStrikerS〜孤独の歌〜始まります。












——六課・部隊長室——


「臨時査察って……機動六課に?」

部隊長室のソファーに座ったまま、目の前のはやてに問いかけるフェイト。

「うん……地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ」

「地上本部の査察は、かなり厳しいって……」

困ったように話すはやてに、同様にフェイトも真剣な顔で聞き返す。

「うぅ……うちはただでさえ、突っ込みどころ満載の部隊やしな……」

機動六課ははやての身内と新人達で構成された部隊であり、同時に裏技や抜け道的なものも多く使っている為、査察で指摘される可能性のある部分は多い。

「今配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直致命的だよ?」

「う〜ん……何とか乗り切らな」

心配そうに話すフェイトに答えるはやて。査察の結果如何で、今まで通りの行動がとれなくなる事を二人は心配していた。

はやての言葉に少し考えた後、フェイトはかねてより考えていた事を訪ねる。

「……ねぇ、これ、査察対策にも関係してくるんだけど……六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな?」

部隊の設立自体ははやての夢。フェイトもそれは理解していたが、機動六課については話しが別だった。

身内と新人で構成された、いざとなれば切り捨てる事が容易な部隊構成。リミッター等を利用した過剰な戦力の集中……まるで、単独での大規模戦闘を想定しているような部隊だった。

なのはもフェイトも、部隊設立の意図には前々から疑問を感じてはいた。しかし、はやてにも考えがある事は理解していたので、二人共突っ込んでは聞いていなかった。

真剣な表情のフェイトに頷いてから、はやては話し始める。

「……そやね。まぁ、ええタイミングかな。今日、これから聖王教会本部……カリムの所に報告に行くんよ。クロノ君も来る」

「クロノも?」

はやての口から出た義兄の名前に聞き返すフェイト。

「なのはちゃんと一緒についてきてくれるかな?そこで、まとめて話すから」

「……うん」

少し微笑んで話すはやてに、フェイトも同様に微笑んで答える。

「……なのは、戻ってきてるかな?」

はやての言葉を聞いた後、フェイトはなのはの様子を見る為端末を操作する。

そこに映ったのは、泣きじゃくる子供にしがみ付かれ困り顔のなのはと、なのはの周囲でどうしていいか分からない様子のコウタを除いた新人フォワード達。

フェイトとはやては顔を見合わせた後、なのは達の居る場所へと向かう。











——寮・廊下——


寮の廊下を急ぎ足で歩く俺……だいぶ遅れちゃったな。

(フェイトちゃん、はやてちゃん……あの……助けて!)

んん?念話?

なのはさんの部屋に向っていると、道中で念話が聞こえる……どういう状況だろう?

(とりあえず、病院から連れて帰って来たんだけど……何か、離れてくれないの)

(ふふ、懐かれちゃったのかな?)

病院から連れ帰った……ああ、あの保護した女の子のことかな?

(それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど……)

((((すみません))))

なのはさんの言葉に続いて聞こえてきた四人の念話で、大体の状況は理解する。

隊長達は出かけるって言ってたし、そこで泣きつかれて困ってるって感じかな?

(ふふ、いいよ……任せて)

なのはさんとは対照的に、余裕のある声で話すフェイトさん。

しばらくした後で、スバルの声が聞こえてくる。

(な、何かフェイトさん……達人的なオーラが!)

(フェイトさん、まだちっちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし……)

(使い魔さんも育ててますし)

スバルの声に続けて聞こえてくるエリオの声。そして、それに補足を入れる様に続けるキャロ。

けど、アルフさんは……育ててる?見た目より年齢は高そうだったけど……

(あ〜更にあんたらのちっちゃい頃も知ってる訳だしね〜)

ティアの念話が聞こえた辺りでなのはさんの部屋につき、子供を驚かせないよう静かに入室する。

すると目の前には、申し訳なさそうに一列に並ぶスバル、ティア、エリオ、キャロ。緑と赤のオッドアイの少女に服を掴まれたまま困り顔のなのはさん。その5〜6歳ぐらいの少女の前にしゃがみ、ウサギの人形を使って子供をあやすフェイトさん。そして、それを微笑みながら見つめる八神部隊長がいた。

「だから……いい子で待ってよう?ね」

「……うん」

フェイトさんが人形を差し出しながら話し、少女がそれを受け取って頷く。

流石フェイトさん……聞こえてきた状況的に、泣いてる少女をフェイトさんが上手くあやしたんだろう。少女はフェイトさんへの警戒を解いて頷いていた。

俺は少しタイミングを見ていたが、丁度よさそうだったのでなのはさんに声をかける。

「申し訳ありません。私用で遅くなりました」

「あ、コウタ」

なのはさんに軽く頭を下げてから、突然現れた俺を怯えた目で見ている少女へ近づく。

そして、少女がビクッと一瞬身を引いたところで停止し、目線を合わせるようにしゃがんで微笑む。

まだ話しかけはしない……経験上このぐらいの年頃の子どもは、こっちから積極的に近付くと恐がってしまう。なので、まずは警戒を解く為に近くで微笑んだまま見つめる。

こうやって危険が無いことを認識させておけば、子供は好奇心の強いはずだから……

「……」

動かずそのまま間をおくと、思惑通り少女は俺に興味を持ったようでおずおずと俺に手を伸ばしてくる……まだ、こっちからは動かない。

そして、少女の手が俺の頬に触れる。……よし、これで大丈夫。

向こうからコミュニケーションをとってきてくれた後なら、こっちから行動しても大丈夫だ。

俺は頬を少女に触らせたまま、ゆっくりと少女の頭に手を置いて軽く撫で自己紹介をする。

「初めまして、俺はコウタ・エルザード……名前、教えてもらってもいいかな?」

「……ヴィヴィオ」

自分から触れたことで警戒が解けたようで、俺に自己紹介を返してくれるヴィヴィオ。

「よろしくね。ヴィヴィオ」

「……うん」

俺の言葉に少し笑顔を見せてくれるヴィヴィオ。

(うまいね……コウタ)

(何度か経験ありますし……)

その様子を見ていたフェイトさんから念話が届き、返事を返す。

そしてなのはさんも、微笑みながらヴィヴィオの前にしゃがみ声をかける。

「それじゃあ……ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるね」

「……う、うん……いってらっしゃい……」

やはりなのはさんと別れるのは寂しいのか、少し目を潤ませながらなのはさんに頷くヴィヴィオ。

その後、俺の制服の袖を掴んで俺の方を見てきたので、微笑みながら答える。

「俺はしばらくここにいるよ……一緒に遊ぼうか?」

「うん!」

俺の言葉に嬉しそうに頷くヴィヴィオ……無邪気で可愛いな。しかし、孤児院での経験が役に立つとは……想像してなかったな……














——ヘリ・内部——


「ごめんね〜お騒がせして」

聖王教会に向うヘリの中で、なのはは先程の出来事をフェイトとはやてに詫びる。

「いやぁ〜ええもん見せてもらったよ」

「ぅ……」

「ふふ」

少し意地悪い笑顔で返すはやてに、申し訳なさそうに小さくなるなのは。はやてはその様子を見て、フェイトと一緒に微笑みながらヴィヴィオについて話す。

「しかし、あの子はどうしよか?何なら、教会に預けとくんでもええけど……」

「平気。帰ったら、私がもう少し話してなんとかするよ」

はやての言葉にしっかりと返すなのは。

「今は、周りに頼れる人が居なくって……不安なだけだと思うから」

続けたなのはの言葉に頷いた後、はやてはふと思い出したように話す。

「しっかし……ホント、コウタは何でも出来るな〜」

「あはは、コウタが居てくれて助かったよ……でも、経験があるって言ってたけどいつ経験したんだろ?」

はやてとなのはの言葉を聞いて、少し寂しそうな顔になるフェイト。

「昔、孤児院に居た頃に育てた事があるんだって……たぶんコウタの年齢から考えて、5~6歳の頃に……」

「そっか……」

フェイトの言葉の意味を理解して、同様にさみしそうな顔になるなのはとはやて。

三人はコウタの居た孤児院の事を想像して、そんな子供が育児をしなければならないほどの場所だった事に寂しげな顔になった。

それも間違いではないが……コウタが育児を行ったのは前世での話で、その際の年齢は14前後だったのだが……三人はそれを知る由は無かった。















——六課・オフィス——


機動六課のオフィスでは、スバルとティアナが報告書の作成を行っていた。

軽快に端末を操作して作業を進めるティアナと、困ったような顔でゆっくりキーボードを叩くスバル。

「はい、おしまい」

「はやっ!?」

手早く報告書の作成を終えたティアナに、スバルが驚きの声を上げる。ティアナは少し体を伸ばし、スバルの方を向いて声をかける。

「もたもたしない!少し分けなさい……やったげるから」

「うぅ……ありがとう。書類仕事苦手〜」

ティアナの言葉に少し申し訳なさそうにデータを送り始めるスバル。

「今日はライトニングの分も引き受けちゃったしね〜まぁ、それでも保育士もどきよりは気楽だわ」

スバルから送られてきたデータを処理しながら呟くティアナ。ティアナの言葉通り、二人は今日ライトニングの三人の書類も変わりに処理していた。

本当はエリオとキャロにヴィヴィオの相手を任せて、コウタがライトニングの分を処理する予定だったのだが……ヴィヴィオがコウタを離さなかった為、スターズの二人が纏めて引き受ける事になった。

「え〜私は結構楽しかったけどなぁ……っと」

ティアナの言葉に答えながらスバルが端末を操作していると、先日戦ったナンバーズの映像データが表示され、それを見たスバルは少し固まる。

「……ん?ああ、それこの前の……」

「……アルトが記録した……各種の詳細データ付き。あれだけの事をしでかして、使ってたのは魔力じゃなくて別系統のエネルギー……そんなの、体の中に内包してるってことは」

スバルはナンバーズに対し何か心当たりがある様で、深刻そうな顔で呟く。

そして、それを見たティアナはゆっくりと手を伸ばしデコピンの構えをとる。

「やっぱり、こいつら……ん?あぎっ!?……てぃ、ティア?」

ティアナにデコピンをされて椅子から落ちるスバル。ティアナはそれを眺めながら呆れた様子で話す。

「馬鹿ねぇ……こいつらが何なのか考えるのなんて、私等の仕事じゃないでしょ?判断するのはロングアーチスタッフと隊長達。私達が作ってんのは、その判断材料としての報告書……分かったらさっさと作業!」

「……はぁい」

ティアナの言葉を受けて、スバルはデコピンされた頭を押さえながら席に座る。そしてティアナは、スバルが席に座ったのを見た後……作業を続けながら話しを続ける。

「それに確定が出たとしても、アンタが悩む事じゃないでしょ?しゃんとしてなさい」

「ティア……うん、ありがと」

気にするなと言うティアナの言葉に、スバルは嬉しそうに頷き作業を再開する。

ティアナはスバルのお礼に少し恥ずかしそうな顔をした後、話題を変える様に話す。

「……しっかし、コウタって……何か子供とか小動物とかにはよく懐かれるわよね?」

「……コウタ優しいからね。昔から、動物とかにはよく懐かれてたよ」

ティアナの言葉に、懐かしそうに話すスバル。ティアナはそれを眺めて、前々から聞いてみたかった事を訪ねる事にした。

「そういえばコウタって、昔は性格違ったっていってたわよね?どんな感じだったの?」

ティアナの言葉にスバルは昔を思い出すように手を止めて、ゆっくりと話し始めた。

「……う〜ん。昔はいつも周りを睨む様な眼で見ててね……今よりずっと冷たい感じだったかな?私の事もいつも鬱陶しそうに見てたしね〜」

そんな風に話しながらも、スバルの表情はどこか楽しげだった。

「……でも、いつもなんだかんだ文句言いながらも私に付き合ってくれたし……私が困ってる時とかも助けてくれた。優しいのは昔からだよ」

「へぇ〜」

スバルの話を聞きながら、ティアナも楽しそうに微笑む。

「例えば、9歳の頃だったかな……」

スバルは昔の思い出を次々話し始める。














そして、スバルがティアナにコウタのエピソードを話している頃。オフィスの入り口では、コウタが困ったようにオフィスの様子を伺っていた。

「は、入りづら……」

なんとかヴィヴィオを説得して、報告書の手伝いに来たコウタだったが……オフィスでは、スバルとティアナが自分の話題で盛り上がっていた為。入るに入れなくなってしまっていた。

コウタはしばらくその様子を眺めていたが、一向にコウタの話題が終わる気配はなかった。

「……出直そう」

コウタはがっくりと肩を落として、ヴィヴィオの待つ部屋へと戻った。





















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コウタ=対年下○

今回は、のんびりとしたお話でした。事態が大きく動くのは次か、その次ですかね?

なんだかんだで面倒見のいいコウタは年下相手には強いようです。

そう言えば、六課休日編から地上本部襲撃までって2カ月近くあるんですよね〜意外と長い期間ですね……

次回は、ゼスト登場までいけるかな?
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