魔法少女リリカルなのはStrikerS〜孤独の歌〜
□共通ルート三十一話〜四十話
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第三十一話「ホテルとオークション@?」
六課に来た時から感じていた……
大切な物が増えていくような感覚……
守りたい物の多さと、足りない自分の力……
心の歪みは静かに、大きくなってきていた。
魔法少女リリカルなのはStrikerS〜孤独の歌〜始まります。
——ヘリ内部——
「ほんなら改めて、ここまでの流れと今日の任務のおさらいや」
新たな任務へと向かうため、俺達はヘリで移動していた。
八神部隊長がモニターを開き、事件の進展について説明している。
「これまで謎やったガジェットドローンの製作者、及びレリックの収集者が現状ではこの男……違法研究で広域指名手配されてる人物、次元犯罪者ジェイル・スカリエッティの線を中心に捜査を進める」
モニターには一人の男性が写っている。こいつが、レジアスさんの言ってた……
「こっちの捜査は、主に私が進めるんだけど……皆も一応覚えておいてね」
「「「「「はい」」」」」
捕捉で説明するように言うフェイトさんに俺達が返事をする。
そしてリインさんがモニターに近づき、今回の任務先が表示される。
「で、今日これから向かう先はここ……ホテル・アグスタ」
「骨董美術品オークションの会場警護と人員警護。それが今日のお仕事ね」
リインさんの説明に、なのはさんが付け加えた後、リインさんが詳細を話し始める。
「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが出てきちゃう可能性が高い……とのことで私達が、警備に呼ばれたです」
妙だ……
確かにロストロギアと言ってもいろいろある。レリックの様に危険度の高い物もあれば、ただの観賞用として存在する物もある。
そういった危険性のない物が、本局の許可を経て取引に回されることもあるが……ガジェットがそれを誤認するか?
そして、ただ可能性があるというだけにしては、六課フォワード全員で出動なんて大規模すぎる。
「この手の大型オークションは、密輸取引の隠れ蓑にもなるし、いろいろ油断は禁物だよ」
そう言ってフェイトさんが続ける。
なるほど、密輸か……確かにそれなら魔力値の高いロストロギアも紛れ込むし、誤認の可能性もあるか……というよりは、この言い用……レリックが密輸される可能性が高いって認識しといたほうがよさそうだな。
「現場には昨夜から、シグナム副隊長とヴィータ副隊長他数名の隊員が張ってくれてる」
目を……使うか?いや、俺の目はどれだけ距離があっても見えるわけじゃない。自分の視力が届く範囲が限界だし、ホテル全体を見るのは無理だ。
それに封印処理されてたら、判別なんてできないしな。
「私達は建物の中の警備に回るから、前線は副隊長の指示に従ってね」
「「「「「はい」」」」」
返事をした後、キャロが少し視線を動かし手を上げる。
「あの、シャマル先生。さっきから気になってたんですけど……その箱って?」
その言葉を受けて、考えを一旦止めて視線をシャマル先生の足元へと移す。
そこにはケースが3つあった。
「あ、これ?……ふふ、隊長達のお仕事着♪」
ああ、そういえば高級ホテルだったな。
——ホテル・アグスタ——
ドレスに着替え受付を済ませたなのはとはやては、オークション会場の警備を確認しながら話していた。
「会場内の警備は、さすがに厳重っと……」
辺りを確認しながら、水色のドレスに身を包んだはやてが呟く。
「一般的なトラブルには、十分に対処できるだろうね」
ピンク色のドレスを着たなのはが同意するように話しかける。
「外は六課の子達が居るし、入り口には防災の非常シャッターもある。ガジェットがここまで入って来る用務はなさそうやしな」
「うん、油断はできないけど……少し安心」
「まあ、どっちにしても私達の出番は、ホンマの非常事態だけや」
二人は少し安心したように話を続けた。
「オークション開始まで、後どれぐらい?」
フェイトは一人、ホテルの廊下を歩きながら、バルディッシュに問いかける。
≪3時間27分です≫
その問いかけに、バルディッシュは冷静に答える。
フェイトはその言葉に頷き、足を進める。
「ん……あれ?」
通路で話す金髪と緑髪の男性。
金髪の男性が、フェイトが通り過ぎた後、気になったようにそちらを向く。
「先生……どうかしましたか?」
その様子に緑髪の男性が問いかける。
「ああ、いえ」
金髪の男性は、視線を戻し何でもないと答える。
警備を行っているフォワード陣。
やや退屈していたのかスバルがティアナとコウタに念話を送る。
(でも今日は、八神部隊長の守護騎士団。全員集合か〜)
辺りの警戒は行いながらスバルは話す。
(確かに、全員揃って同じ任務なのは初めてだな)
コウタも端末で人員配置を確認しながら応える。
(そうね……スバルは結構詳しいわよね?八神部隊長や副隊長達の事)
ティアナが警戒は怠らずに聞き返す。
(う〜ん、父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど、八神部隊長が使っているデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の書って事。副隊長達とシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有している特別戦力だって事。で、それにリイン曹長を合わせて、六人揃えば無敵の戦力って事……まあ、八神部隊長達の詳しい実状とか能力の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけど)
あくまで聞いた話だと言いながら、それなりに詳しく説明するスバル。
(まぁ俺達の階級じゃ、古代ベルカ術式持ちの情報なんて閲覧できないしな)
(レアスキル持ちの人は皆そうよね)
コウタはいつも通り興味のなさそうな声で答え、ティアナは少し普段と違う声で答えた。
(うん?)
(ティア、何か気になるの?)
普段と違うティアナの声に、コウタとスバルが反応する。
(……別に)
(そう、じゃあ二人とも又後でね)
(……ああ、それじゃあな)
ティアナの答えに、二人は深くは詮索せずに念話を切る。
ティアナは念話が切れた後、難しそうな顔で考え込んでいた。
「(六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーS、副隊長でもニアSランク)」
通常の部隊であれば、分隊長は精々AからAAランク前後。ニアS、オーバーSなんて、いくつかの部隊を合わせて一人いればいいほうなのだが、六課にはそれが5人。一個の部隊としては異常な戦力だった。
「(他の隊員達だって、前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。あの歳でもうBランクを取ってるエリオと、レアで強力な竜召喚士のキャロは、二人ともフェイトさんの秘蔵子。危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性の固まりで、優しい家族のバックアップもあるスバル)」
そこで一度考えを止め、悔しそうな表情をするティアナ。
「(そして……コウタ。大した努力もしないで、希少な技能を平然と使いこなす万能型……紛れもない天才……本人も周りも専門職には敵わないなんて言ってるけど、それは違う。アイツは昔から大した努力もせずに、平然とそれぞれの専門の一歩後ろに居る……はっきり言って異常だ)」
コウタは隠れて他人の数倍の努力をしているのだが、ティアナはそれを知らない。
ティアナの目には、どんなことでも出来る超人に見えていた。
「(アイツは、ライトニングでのベースポジションはセンターガード。もしコウタがセンターガード一本に絞ったら……私はきっと簡単に追い抜かれる。精密射撃なら私の方がまだ上かもしれない、戦術はたぶん互角ぐらい。でも、アイツには桁違いの器用さがあるし、希少な技能だっていくつも使える。あらゆる状況への対応力だってある……結局、うちの部隊で凡人は私だけだ……)」
ティアナは一度目を閉じてから強く開く、コウタに対して抱いた劣等感を振り払うように……
「(だけど、そんなの関係ない!私は……立ち止まる訳にはいかないんだ!)」
自分の力を証明しようと、ティアナは意思を固める。
それが、間違いを起こすと気付かないまま……
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アグスタ編に入りました。
……コウタ全然しゃべってないんだけど;;
幻術も使えて、射撃寄りオールラウンダーのコウタはティアナにとって劣等感の対象の様です。
そして、こうやって他人の視点から見ると、コウタは結構異常な能力を持ってる気がしますね。でも活躍してない……なんでだろ?
アグスタ事態は後2話ぐらいでいけそうかな?その後のティアナの苦悩編がずいぶん長くなりそうですが……
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