緋弾のアリア〜龍偵〜

□第27鱗
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神崎がどっか行った翌日。放課後になって、俺は火野と一緒に音楽室でジャンヌに昨日のこと を聞かせている。

「ーーーという訳で、さっさと諦めろジャンヌ」

「これは審治が私の気持ちに気づいてる喜んで良いのか?それともふられたことを悲しんで良 いのか?」

ジャンヌは訝しげに火野に目を向けた。

「喜んで良いんじゃないか?それから審治に誓いというのを破らせることを考えればいいんだ し」

「それもそうだな」

「破らせれるものなら破らせてみろ。ま、不可能だろうがな」

「フッ、ならば私は不可能を可能にする女となろう」

ジャンヌが決意を表すかのように目に炎をたく。窓は凍り付いたが。

「ジャンヌ、火野、審治。お前等何やってんだ?」

振り返るとキンジが入り口にいた。

「おう、キンジ。お前こそ何してんだ?とっくに帰ってると思ったんだが」

「執事の勉強しててな、帰ってる途中大雨が降ってきたから雨宿りしてたんだよ。そしたらジ ャンヌの姿があったから、聞きたいことを聞きに来たんだ」

「あそ。だってさ、ジャンヌ」

俺は壁に向かって歩きながら言う。

「ふむ、遠山、お前が聞きたいのは、イ・ウーについてか?」

俺は壁に寄りかかるフリをしながら後ろで携帯をイジる。

「そうだ。アリアも理子も何も教えてくれなかったからな」

メールを打って、

「遠山、それはお前の為でもあるんだぞ」

送信っと。

「アバドンに狙われるからか?」

「そうだ。前にも昨日話した・・・・・・ん?」

「どうした?」

ジャンヌは携帯を取り出した。それを見て、直ぐに閉じる。

「良かったな、遠山。今、アバドンからメールが来た。お前にイ・ウーの事を話しても良いら しい。ただし、何もかもではない。アバドンが狙わないとしても、他のメンバーの事を喋れば 、そいつ等に狙われるからな」

「狙われても、お前ほどの戦闘力があれば大抵の敵はやり過ごせるだろ」

俺は話している2人から目を離して、窓に向ける。

(何だ?この視線の感じは、狼?確か襲ってきたコーカサスハクギンオオカミをレキが手懐け たってキンジ言ってたな。まだいたのか?)

「無理だ。私の戦闘能力は組織の中で最も低いのでな」

キンジが驚いてる横を俺は横切って教室を出る。

「審治、何処行くんだ?」

「依頼の事で呼ばれてるの忘れてた。火野、お前はキンジと一緒に話を聞いとけ。じゃあな」

扉の所で振り向かずに言った後、急いで棟を出て、美術棟の屋上に向かう。

「やっぱり、狼だったか」

濡れていても毛並みは威厳を放つかのような銀色。そして、100キロはあるだろう巨体。思 った通りコーカサスハクギンオカミだ。他にも仲間がいたんだな。

「ぐるるるる」

俺に牙をむき出しながら唸る狼。

「審治さん、下がってください」

声に振り向くと、雨に濡れるのも構わず、レキがドラグノフを狼に向けていた。

「何でここに?ここは美術棟のはずだが」

「選択美術の課題をやってました」

そういや狙撃手って細かく銃を調整したり、集中力を保つ事が多いから、絵画とか得意な人が 多いって聞いたことあるな。

「審治さん、危険です。その狼は、私でも手懐けられないほど今の主に忠実です」

再び狼に向き合うと、狼はレキの銃を警戒しながらも俺に飛びかかろうとしていた。

「審治さん」

レキが少し急かす様に言ってくるが、俺はそれに応えず、狼に手を出す。

「おいで」

「ぐるおっ!」

狼が遂に飛び出した。俺に噛みつこうと口を開けながら。瞬間、俺は左手を横に出し、右手を 身を守るために前に出す。

パァン!

勘で、ドラグノフの発砲音が聞こえる一瞬前に開いていた左手を閉じる。そして狼が俺の腕に 噛みついた。衝撃を和らげる為に片膝を着く。

「痛っ」

右手に走った痛みに軽く顔が歪むが、この程度、界上の力を使った時に走る痛みの方が痛い。

「審治さん、どうしてですか?」

「こいつは、罪の無い、ただの動物だから」

俺は閉じていた左手を開いた。そこからドラグノフの弾丸がコンクリの上へと落ちる。

「レキなら跳弾で飛びかかってきたこいつを撃つと思ったから、跳弾の軌道を読ませて貰った 」

左手で狼の頭を撫でる。

「お前は人に仕える奴なんかじゃない。野に帰れ。お前が気に入った場所へと行き、自然の中 で生きろ」

俺は言い聞かせるように言う。狼は噛みつつ俺の目をジッと見つめている。徐々に噛む力を弱 めていって、最後には腕を解放してくれた。

「良い子だ、お前は」

左手で撫で続ける。狼は詫びのつもりか噛みついた部分を舐めている。

「さ、行け。お前の気に入った場所へ」

「グオン!」

狼は一回吠えて、屋上を飛び降り、武偵校を出るために走っていった。

「相変わらずですね、審治さん。あなたは、私以上に動物を従えることが出来る」

いつの間にか隣に来ていたレキが静かに言った。

「自慢する事じゃないけどな。さて、帰るか。レキ、お前はまだ残るのか?」

立ち上がって、レキの方を向く。

「いえ。私も帰ろうと思います。ちょうど課題も終わりましたので」

「じゃ、一緒に帰るか」

「はい」

一緒に美術棟を出てバス停まで歩こうとした時、

「審治さん、傘は?」

「無い。まぁ、もう濡れてるんだし良いかなと思って」

そう言ったら、レキが自分が持っていた傘を俺に差し出してきた。

「使って下さい。これ以上濡れれば、風邪をひきます」

「いや、それだったらレキが濡れるぞ」

「構いません」

「いや、構えよ」

ツッコんでレキに傘を押し返そうとするが、レキは意地でも渡す気の様だ。

(仕方ない。レキなら大丈夫だろ)

傘を貰って、着ていたブレザーを脱ぎ、レキにかける。

「気は進まないだろうけど、一緒に入るか。それなら良いだろ」

「はい」

さした傘に2人で入る。少し狭い為、左腕がレキに当たる。

「審治さん」

歩き始めて直ぐ、レキが聞いてきた。

「どうして上着をかけてくれたんですか?」

それ、言わせますか?

「レキ、お前は濡れてたんだぞ」

「それは審治さんもです」

「レキ、お前は女子だろ」

「それが何か?」

「雨で透けて下着が見えるから、それの対策だ」

「そうですか」

レキの口が微かにへの字に見えるのは気のせいだろう。

「レキ、そう言えばお前、さっき相変わらずって言ったよな。小さい頃も俺、あんな感じの事 をやったのか?」

「はい、やりました。まだ、思い出しませんか?」

「ゴメン、思い出せない」

これでも努力してるんだけど、きっかけと言うのが無いからなぁ。

「そうですか」

少し悲しそうに俯くレキ。

「そのうち思い出す。絶対な」

右手で傘を持ちながら、左手でレキの頭を撫でる。

「あっ、レキ、バス来てる。走るぞ!」

2人で走り出す。その時見えたレキの顔が微かに赤くなっていたのは見間違いじゃないな。や っぱり、そうゆう反応出来るのか、レキ。
















数日後

「あかりちゃん!ついに来たね、イギリス!」

「私、外国って初めて!」

「お姉さま、アレって前話していた物ではありませんか?」

「おお!マジであった!買うぞ、麒麟!」

イギリス空港でハシャぐ4人の武偵女子共。イスに座りながらそれ見る俺。

「お前等、少しは落ち着けよ。外国来たぐらいで」

「初めてなんですから、良いじゃないですか」

佐々木と一緒にはしゃいでいた間宮が抗議してくる。

「そろそろ依頼主が手配してくれたガイドが来るぞ。あまり失礼の無いようにな」

「そう言えば、誰なんです?」

チョコボールみたいのを島と一緒に食っているライカ、お前はしっかりして欲しかった。

「さぁ。腕の良い武偵って聞いたけど、名は聞いてない。イギリスに知り合いなんて一人もい ないから、初対面って事は分かるけど」

「残念だけど、初対面じゃないよ」

後ろからの声に振り返ると、

「久しぶりだな、ヒヤミ」

立っていたのは灰色のブレザーを着た

「ワトソン・・・・・だっけ?」

「失礼だぞ。自分は後輩に注意しておきながら」

整った顔の眉間にしわを寄せるワトソン。

「先輩、誰ですか?」

間宮達が居心地悪そうにしている。

「あ、悪い悪い。こいつは・・・・えーっと、なんなんだっけ?」

「エル・ワトソンだ」

「足踏むこと無いだろ。とりあえず、こいつはエル・ワトソンだ。どうやらガイド役をやって くれるらしい」

「「「「初めまして」」」」

「初めまして。ここじゃ何だから取り敢えずホテルの方に移動しようか。荷物なんかも置けば 良いし」

「そうだな。その後話すか。色々とな。お前等も良いか?」

一応確認を取ると、4人と頷いたのでワトソンが先導する形で空港をあとにした。
 

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