緋弾のアリア〜龍偵〜

□第18鱗
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「これは、ジャンヌの氷か」

進入して数分、床に張り付いている氷を発見。氷の強さから見て、指輪を使ってはいないらし い。

取り敢えず、先に進む。

「お、発見。とにかく隠れますか」

白雪さんが壁に三つの『ドラム錠』で縛られている。キンジと火野、神崎が必死に解除しよう としてるが、無理っぽいな。

「堅いわね。審治の刀だったら斬れると思うけど・・・・」

「審治は今、レキと後方からの援護に専念している。ここには入ってこないと思う。・・・・ ・・・・・・・何だ?」

突如、

ズズン!

と、くぐもった音が倉庫に響き渡った。そして、排水穴から、水が出て来た。しかも水量はど んどん増してきている。どっかの排水系を壊したか。

「まずいな。この勢いだと水没まで10分程度だ。アリア、どうやら相手もお前の弱点を知っ てるようだ」

「火野、弱点って何だ?」

「アリアはカナヅチなんだ」

「ち、違う!浮き輪さえあれば!」

そんな物ねえよ。とゆうか泳げないのか。ガキって感じだな。

「そんな物は無いぞ。遠山、ここはお前に任せる。私とアリアは奴を追う」

「ああ、分かった」

「ま、待ちなさい!あんた達を見捨てて逃げるなんてできない!」

「違うぞ、アリア。この鎖は解けない。なら、私とアリアでさっさと倒し、鍵を手に入れれば 良いんだ」

「で、でも」

「泳げないお前がここにいてもお荷物だ!分かっている筈だ!」

早くジャンヌを追わなければ行けない焦燥感から語気を強める火野。

「アリア、火野の言う通りだ。行け!今は一秒でも時間が惜しい!」

茶番も良いが、水、神崎の膝まで来てるぞ。

「分かったわ。でも、ダメだと思ったら絶対、あたしを呼ぶのよ!?」

呼んでお前に何が出来る?皆の心に生まれし疑問だった。























白雪の錠をヒステリアスモードになって解除した俺は、なかなかのピンチだ。

「私に続け、アリア。リュパン4世が攫いそこねたお前も、もらっていく」

白雪の刀を持ち、白雪の姿で、声は別人の女、ジャンヌが俺の前でアリアを盾にしている。そ のアリアの両手、右膝は、ジャンヌによって氷が張りついている。一族が研究し続けてきた力 。想像もつかないものだ。それに、見事な変装だ。ヒステリアスモードの俺でなかったら、完 全に騙されて殺られていただろう。

「遠山。今のお前の弱点は『女を人質にされること』、だろう?動けば、アリアが凍る。アリ アも、動けば動いた場所を凍らせる」

さすがは策士を名乗るだけはあるな。俺らを完璧に封じ込んで来やがる。

「キンジ、撃ち、なさい・・・・・・!」

アリア、悪いが今の俺にそれは出来ない。

「「アリア!」」

その声は、ジャンヌの背後、3メートルはあるコンピューターの上から分銅付きの鎖とともに 来た。そして、その鎖はジャンヌが手に持っている白雪の刀の鍔に巻き付いて、グイッと引っ 張り、ジャンヌの手から離す。

そのコンピューターの上には、いつもは大人しい雰囲気をまとわせていたが今は、勇敢な雰囲 気をまとっている白雪と鎖を持っている火野がいた。

「雪ちゃん!」

火野が鎖を釣り上げ、白雪の手に飛ばす。それをキャッチした白雪が飛び降り、アリアとジャ ンヌの間に割り込むようにしながら刀を斬り下ろす。ジャンヌはアリアを突き飛ばし、それを 止めるが、火野にクナイを投げられ、後退せざるを得なくなった。

「白雪、火野。貴様達がアリアを助けるとはな」

袴の裾から取り出したのは・・・・・・・・

「煙幕!?」

そして、発煙筒の煙を感知した天井のスプリンクラーが水を撒き始める。

「ごめんねキンちゃん。今のでやっつけれると思ったんだけど」

「いや、上出来だよ、白雪」

「アリア、手は大丈夫か」

「ダメね。握力が弱ってるわ」

ぐっ、ぱっ。ぐっ、ぱっ。と、手をむすんでひらいてをしているアリア。

「そうか。遠山、私は雪ちゃんと合流して確かめたんだ」

「何をだ?」

「雪ちゃんがアリアにした嫌がらせの内容だ。その結果、それに混じって奴はアリアに罠を仕 掛けていることが分かったんだ」

「やっぱりか。俺は不知火が見たと言っていた白雪とその偽物とすれ違ってる。あの女、今ま でずっと、白雪に化けて武偵校に潜んでいたんだ」

「キンジ、あんたまたなれたのね!?」

「そうだよ。アリア」

その答えで強気になったのか、牙っぽい犬歯をむいて叫んだ。

「魔剣!あんたがジャンヌ・ダルクですって?卑怯者!どこまでも似合わないご先祖様ね!」

「お前もだろう。ホームズ4世」

エレベーターホールの方から声が返ってきた。

「雪ちゃん、アリアの治療をお願い。私は周囲の温度を上げるから」

「うん、お願い」

白雪がアリアの方に下がったため、俺は二人を守るように前に出る。火野は鎖をどこかに納め て日本刀を取り出す。よく見れば火野の体の周りが微かに紅く光っている。そして、肌寒かっ たのが暖かくなってきた。気付けば服も乾いている。これが超能力か。

「魔女の氷は毒と同じ。これを治せるのはシスターか巫女だけ。でもこの氷はG7かG8はあ るから私が治しても元に戻るまで5分はかかると思う。だからキンちゃん、その間キンちゃん が守ってあげて。あいつは私と火野ちゃんで倒すよ」

「何を言うんだ。お前等二人だけで戦わせるわけには行かない」

「キンちゃん、そう言ってくれる、うれしいよ。でも今は私と火野ちゃんに任せて。アリア、 これ、すごくしみると思う。でも、ガマンして」

白雪が何か呪文のようなものを呟いた。

「あっ!んくっ!」

痛みが走ったようでアリアが声をあげる。

「これで大丈夫。火野ちゃん、良い?」

「行けるよ、雪ちゃん」

俺の横を通り過ぎ、火野の隣に立つ白雪。

「ジャンヌ、もう止めよう。私は誰も傷つけたくないの。例え、貴女であっても」

「笑わせるな。原石でしかないお前が、イー・ウーに研磨された私に適うわけが無い。たとえ 、『火の踊り子』と組んでもな」

「私と雪ちゃんはG17の超能力者だぞ?」

「それが本当であっても、お前等に勝ち目はない」

煙の向こうから聞こえてくるジャンヌの声は自信に満ちていた。何が彼女にそれほどの自信を 与えるのかわからない。この以前の白雪を相手にしても勝つにはとてつもなく難しいのだろう に。室温は既に常温に戻っている。煙も晴れてきた。

「リュパン4世による変装も終わりだ」

奥から現れたジャンヌの姿は、部分的に覆う、西洋の甲冑。べりべりっ、とマスクを剥いだそ の顔。刃のように切れ長の目は、サファイア色。美しい、白人だった。

「遠山、これから私と雪ちゃんであいつを倒す。その間、雪ちゃんを見ないでくれ」

「どういう意味だ?」

「私、これから星伽に禁じられている技を使う。でも、それを見たらきっとキンちゃんは私の こと、怖くなる。ありえない、って思う。嫌いになっちゃう」

言いながら白雪は頭にいつもかけていた白いリボンに手をかける。その指も、声も震えていた 。

「白雪、安心しろ。ありえない事は1つしかない。俺がお前のことを嫌いになる。それだけは ありえない」

俺の声に押されるようして、リボンを解く白雪。

「すぐ、戻ってくるね」

その顔は、微笑んでいた。

「ジャンヌ、お前はもう逃げられない」

「ふっ、超能力を手に入れて2年も経たないお前が言うか?」

「確かに、私はまだまだ未熟だ。けど」

「私と、火野ちゃん。私たち2人は似た超能力を持っている。そして、戦いの時、高め合う」

そして、白雪が持つ刀が緋色の光が灯る。室内を明るく照らしたのは、焔!あれが、白雪の切 り札。

「『白雪』っていうのは、真の名前を隠す伏せ名。私の本当の名は『緋巫女』」

言い終えると共に、白雪は床を蹴って、火矢のようにジャンヌの迫った。

「我が炎よ。緋巫女に更なる力を授けよ」

見れば、火野は目を閉じ呪文のような物を喋っていると思ったら手の平を白雪の刀に向ける。 それに反応するかのように、白雪の焔の火力が増えたかのように見えた。実際は増えたのだろ う。ジャンヌはそれを背後に隠していた洋剣で、その一撃を受け止めた。火花とダイヤモンド ダストが散った。
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