緋弾のアリア〜龍偵〜

□第17鱗
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結局、白雪さんのボディーガードはキンジ一人で行うこととなった。神崎は喧嘩して、部屋に も戻ってこない。ま、良いけど

「じゃあ、今日、白雪さんと花火に行くんだ」

「ああ、篭の鳥のままじゃ可哀想だからな」

ここはファミレス。キンジと俺は暇つぶしにきた。

「それは良いけどよ、神崎はどうすんだ?喧嘩したままで良いのか?」

「今回はあいつが悪い」

ブスッと顔を不機嫌にして吐き捨てるキンジをみて溜め息がでる。

「ま、お前にとってあいつは疫病神みたいなもんだからな。気持ちは分かるよ」

「それなら聞くな。それより、あいつは今どこにいんだ?」

「レキの所にいる。あ、そろそろ時間だぞ」

時計を見れば7時頃になっていた。

「そうか。あ、行く前に聞きたいことがあるんだ。この頃帰りが遅いが何してんだ?火野が愚 痴ってたぞ」

「ん?まあ、ちょっと捜し物だ。気にすんな」

「そっか。じゃあな」

出て行くキンジを見ながらコーラを飲む。

「さて、どうぞお座り下さい」

「失礼する」

キンジが店を出たらすぐ一人の男がやってきた。何用かは分かっている。席に座ったのを確認 してコーラを飲み干す。

「組織名は?」

「藍幇」

中国系か。

「それで、何の御用で?勧誘?誘拐?」

「それは貴方の返答次第で決まります」

堅い奴だな。目の前のスーツを着ている男の返答で思った。

「用件は分かっているはずです。あの龍の力、あれを譲って頂きたい」

「断ったら?」

「殺しの許可を得ている」

そうだろうな。さっきからこちらに殺意が来てるし。

「場所を変えましょうか。ここでは交渉し難いので」

男は躊躇いもせず立ち上がった。同時に何名かの客も立つ。用意周到だな。行き先は、人気の 無い路地。もうちょっとしたら、不良とかが来るだろうな。

「では、続きを始めましょう。取り敢えず、断ります」

「死ぬことになるが?」

男の手には拳銃が。左右の建物の屋上からも拳銃を持った男達がいる。合わせて11か。

「これくらいなら良いかな」

「何を言っている?」

「今から死ぬ奴に言う気はない」

良いながら心の鎖を解く。

「久々だ。3倍ぐらいで良いか」

ザワザワと血が疼く。視界が鮮明になり、頭がスッキリする。

「貴様、何をした」

俺の前にいる男。驚きながらも銃を向ける男。

「審判の時だ」

また俺は、飛闇の力を使った。また、アバドンが帰ってきた。














「お帰り、審治」

「ただいま、火野・・・・・レキ?」

「はい」

部屋に帰ったら火野が居た、のは分かってるんだが何故にレキが?

「お二人をボディーガードするようにアリアさんから言われました」

「そうか。寝る場所は空き部屋に布団引くからそこで寝てくれ。飯は今から作る」

「はい」

返事を聞きながら台所に向かう。今日は焼きそばだな。

「そういえば、審治さん。何処に行ってたんですか?」

「ん?暇だったから本屋に行ってた。それより、火野。お前は何してんだ?」

キャベツを洗いながら聞くと。

「武器の手入れだ。何時デュランダルが現れるか分かんないしな」

「お前も存在すると思っているのか」

「どっちにしても用心に越したことはない。アリアはやりすぎだと思うがな」

「そういや、レキ。神崎はどうした?」

「分かりません。何処かに行ってしまいました」

「ふ〜ん」

もしかしたら、ワザとかもな。キンジと離れて、ジャンヌを誘き出す・・・か。

次の日の朝。俺と火野、レキ、キンジ、白雪さんは朝食を食べていた。昨日の食事で分かった が、レキは麺類を特殊な食べ方で食べるようだ。あと、寝るときは体育座りで寝る。

『昨日、未明。日本橋の近くの路地で男11人が変死体で発見されました。警察の話では匿名 の電話がきたと言っています。見つかった死体ですが、上半身が消し飛んでいたり、首が無か ったり、手足がバラバラになっていて、身元の証明となる物も残っていません。鑑識の話では 、手足や首は素手で千切られたとの事です。』

「そんなのが近辺に居るなんて怖いねキンちゃん」

「ああ。そいつがデュランダルの可能性は在るのか?」

「いや無い。ニュースを聞く限り剣を使ってはいないらしいからな。デュランダルは切れ味が 良い剣を持っている噂だしな。ん?」

「ふぉふぃは?ふぃんふぃ」

「火野、食いもんを口に入れてるときに喋るな。ちょっと用事を思い出した。先に行くから」

そう言って、部屋を出る。向かった先はホテル。その一室をフロントからパチった鍵で開ける 。中には

「し、審治!?どうして!?」

ジャンヌがいた。盗聴、盗撮の機械がある。

「なるほど。ジャンヌだったか。さて、死んで貰うよ」

容赦なく真滅天で切りかかる。ジャンヌは跳び避けて、刀は椅子を真っ二つにしただけだった 。

「いきなり何をするんだ!」

怒った顔で俺に剣を向けてくる。

「その理由はその指輪だよ」

ジャンヌが填めている白い指輪を指さす。言うまでもなく、天龍の指輪だ。

「こ、これは、リシュラが・・・・・」

「問答無用・・・・死ね!」

「待って!お願いします!」

ベットの上で土下座をするジャンヌを見て、振り上げた刀を止める。

「遺言?」

「ち、違う!説明は、リシュラがする!」

渡された指輪を手に取り、話しかける。

「リシュラ、どういうつもりだ」

【言ったはずだ。興味が出てきたとな】リシュラ

「何時から?」

【貴様がジャンヌとキスした瞬間に】

それを聞いて顔を真っ赤にするジャンヌは放置。

【ジャンヌと話し合った結果、どちらも利害が一致してな】

「一致?」

怪訝な顔でジャンヌを見たが、顔を両手で押さえてブツブツ何かを言っていた。所々聞こえて くる「結婚」「ベットイン」「子供」というのは何だろう。

「リシュラ、どんな利害だ?おまえは人間を見てくると言うのだったよな」

【そうだ。ジャンヌは私の力でお前を超える事が出来ると思ったらしい】

「あぁ、そう。ジャンヌ?」

「は、はい!ごめんなさい!駄目だと分かっていてもどうしても!」

白雪さん並の土下座っぷりを見せながら謝罪を述べるジャンヌ。

「いや、それはもう良いんだけど・・・・・・・・・」

「責任は取ります!金でも何でも!どうせなら私自身を今ここで!」

「ちょ!落ち着け。何で服を脱ぐ!」

慌てて、ジャンヌの手を掴む。

「放せ!審治!既成事実を作ってあいつ等を!」

「訳わかんない事を言うな!少し眠れ!」

ジャンヌの後ろ側の首を掴み、ちょっと電流を流す。スタンガンの様なものだ。気絶したジャ ンヌをベットに寝かせる。

「こいつ、白雪さんに似てきたな」

【人間はやっぱり分からん】リシュラ

「だったら戻ってこい」

【もう少しだけ良いか?こいつが任務をこなすまで】

「・・・・・・・・・良いだろう。俺は手を出さない約束だからな」

【ありがたい】

「じゃ、俺は戻る」

ベットから降り、紙に伝言を書き、部屋を出る。

『ジャンヌ、お前がリシュラを使いこなせるなら、あいつはお前にやる。だがこれだけは覚え ておけ。絶対に呑まれるな』

ジャンヌがこれを読んだのは、1時間後の事だった。


















アドシアード当日。

『勝者!飛闇審治!』

俺はアドシアードの格闘競技に出ていた。ルールは何人かが闘技場でつぶし合い、残った一人 が勝者となる。で、何で俺が出ることになったというと、暇潰し。

生徒は何かに出ないと行けないので適当に選んだのがこれ。

「お疲れ、審治」「お疲れ様です。審治さん」

「ありがと。あれ?レキは狙撃競技に出てたんじゃ」

「審治さんが格闘競技に出てると火野さんから聞いて抜けてきました」

「世界記録が掛かってたんじゃないの?」

「そんな事どうでも良いです」

「そ、そう」

「あっさり切り捨てるのが凄いな」

キッパリ言い切るレキに軽く引く俺等。

「そういや、お前等仲良くなったな。前は睨み合ってなかったか?」

「相手が選んだ相手なら素直に引くという約束だ」

「自分の意志だけでなく相手の意志も大事ですから」

あのレキが人間らしい事を言ったぞ。世界遺産並に貴重だ。

「何か失礼なことを考えてませんか」

「気のせいだ」

いつもはスカートがめくれそうになっても気にしないのに、こういう時は鋭いな。

ん?メールか。

「これは・・・・・・ケースD7・・・・・白雪さん失踪・・・・・」

レキと火野を見れば二人ともそれぞれの携帯を見ている。

「審治!雪ちゃんが!」

「落ち着け、ケースD7は極秘裏に解決せよだ。レキ、火野、行くぞ」

二人とも頷いて、俺の後ろを走る。

『飛闇君!?まだ終わってませんよ!』

審判の先生が俺が会場を出ようとしているのを見て叫んだ。

「急用で棄権します!」

叫んで、スピードをあげる。

「審治さん、狙撃科の屋上に行きましょう。そこから怪しいところを探します」

「分かった。火野、お前はキンジと合流しろ。南側にいると思う」

「分かった」















(二人っきりにして良いのかな?いや、レキとは強引な事はしない約束してる)

私は迷いを振り切り、走るスピードを上げる。武偵高の南側を探せと審治に言われて、走って いる。やっと

「遠山!」

「火野!白雪を知らないか!」

「私も携帯で知った。取り敢えず落ち着け。今、審治とレキが探している」

「そうか。俺等も探すぞ!お前はあっち」

「落ち着け!」

ドゴッと遠山の腹に拳を入れる。

「ゴホッ!?な、何を・・・・・・」

「私たちが走ったところで雪ちゃんは見つからん!審治とレキを信じろ!」

「あ、ああ。そうだな」

やっと落ち着いたみたいだ。その時、着信が来た。

「審治か?」

『そ。ナイス右ストレート』

「そんなことより雪ちゃんは!?」

『見つかってない。だが、海水の流れがおかしい。第9排水溝の辺りだ』

「分かった!・・・・・・・・どっち?」

電話越しでも呆れられているのが分かる。わかんないものはわかんないだ。

『・・・・・・・・・レキ』

『はい。私は・・・・・一発の銃弾』

電話越しにレキの声が聞こえる。あの呪文の様な言葉だ。

ビシッ

私と遠山の足下に傷が出来た。

ビシッ、ビシッ、ビシッビシッ

どんどん増えていく。それは矢印となった。

『その方角です』

『よく調べろよ。俺等はまた捜すのに専念する。もし見つけたら空メール送れ』

「分かった。遠山、この方角の排水溝が怪しいらしい!行くぞ!」

「ああ!」

私たちは走り出した。

(待ってて、雪ちゃん)
















「行ったか」

「はい。次は何処が怪しいと思いますか?」

「いや。恐らくあそこで合ってるよ。あの排水溝は地下倉庫に繋がってるから」

のんびりと腰を下ろし、直ぐに来るであろうメールを待つ。

「あの倉庫の方が策士と言われているデュランダルにとって都合が良いからな」

「分かりました」

「お!来た来た。んじゃ行ってきます。レキは地下倉庫の出入り口を見張っていてくれ。もし 、俺等じゃない奴が出てきたら足を撃って止めてくれ」

「はい。いってらっしゃい」

レキに見送られ、屋上から飛び降りる。そのまま、フワリっと浮いて、キンジ達が入った地下 倉庫に向かう。

(念のためだ)

指輪を付け、いつものロングコートに身を包む。

(最悪、学園島が吹き飛ぶかもな)

苦笑を浮かべながら、降り立ち、そのまま中に入っていった。
 

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