恋愛無関心症患者のカルテ

□番外編:Call my name.
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「君は、私の名前を知っているのだろうか?」

「――…はい?」



***



それは午後16時を回った、検事局12階に位置する上級検察官執務部屋1202号室での出来事――…

これから夕日に染まっていくであろう金色に帯び始めた太陽の光が、執務室の大きな窓から室内へと静かに降り注ぐ中、御剣は正面に立つ唯を見ていた。彼女は手にした書類を捲りながら、淡々とその内容を告げている最中だ。

「検事、これが明日の裁判の最終供述書です。ホシも素直に犯行を認めていますし、問題ないと思われます」

「………」

「個人的に気になるのは…昨日起こったひのまるコロシアムの火事です。検事はご存知だと思いますが、怪我人だけで済んでこちらでも単なる事故ではないかという話になってます…でも、もう少し慎重に調べた方がいいような気がして」

「――…」

「このレポートに私が感じた疑問点をまとめてますので、検事のお時間がある時に目を通していただけたら助かります」

「………」

「それと…」

「君は」

今まで押し黙っていた御剣が、唯のセリフを遮るように声を上げる。すぐさま反応した唯が瞬時に言葉を止め、視線を書類から御剣へと向けた。



そんな仕草を確認して、御剣は話を続ける。



「…君は、私の名前を知っているのだろうか?」

「――…はい?」



思わぬ質問に、唯はぽかんと呆けた顔で御剣に疑問符を投げた。



***
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