恋愛無関心症患者のカルテ
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***御剣の話***
証拠品の保管については警察署に任せている。あの日私はある事件の証拠品をもう一度検分しようと、警察署を訪れたのだ。
刑事課の人間に断りを入れ、証拠品の保管室に入った。人はいないと思った。まぁ、刑事達は現場が仕事場だから、保管室で人と出くわすという事はあまりないのだが。
私は証拠品の事で頭がいっぱいで…だからその…周囲の状況をよく見てなかったのだ。
***
「じゃ、今付き合っている彼女とは、そこで出会ったの?」
「うム…」
言葉を濁す御剣に、2人は訝しげに顔を顰める。
「でも、オメー…証拠品の事で頭がいっぱいで周り見てなかったんだろ?どーやって出会ったんだよ」
「あぁ。出会い方が特殊だったのだ」
「は?」
***
その時、私は何かとぶつかった。
【うおっ!】
【きゃ!?】
それは女性の声で、人とぶつかったのは分かったのだが…一緒に床に倒れてしまった。私からぶつかってきた格好だから、彼女を押し倒してしまったのだ。
【い…た…】
【す、すまな】
痛みに呻く彼女からどこうと、立ち上がろうとしたら…
その……
驚くなよ?
彼女はだな…
***
「……裸だったのだ」
「ぶぼっ!?」
予想外すぎる展開に、レモンチューハイを飲んでいた矢張が盛大に吹いた。その飛沫をモロにかぶった成歩堂が「ぎゃー!」と悲鳴を上げる。
「ちょ…!なんでこっち向いて吹き出すんだよ!バカかお前!!」
「げっほ!ぅえっほ!…だ、だってよぉ」
げほげほと咳き込む矢張と、おしぼりで自分を拭きあげる成歩堂。御剣は黙って見ていたが、最初に帰って来たのは矢張だった。
「裸?マジで?」
「マジで、だ」
「どこからどこまで、裸?」
「なんだその聞き方は?…少なくとも上は裸だった。突然だったからな、下は分からん」
「裸って事は、服着てないんだよな?」
「当然だ」
「じゃあ、おっぱい見たの?御剣」
ようやく話に帰ってきた成歩堂が尋ねる。御剣はひくっと目尻を震わせた。
「…御剣?」
「見た。事故だから、見えてしまったが正しい」
おおおおおお…2人からどよめきが起こる。
「大きかった?」
「――それはわざわざ聞かねばならないほどに重要な事か?成歩堂」
「もしかして、触った?」
矢張の爆弾発言に、成歩堂が笑いながら「ある訳ないよ〜お前じゃあるまいし〜」と言うが、当の本人は渋い顔で黙り込んでいる。
その様子に、場がしんと冷えた。
「……まさか。あの、御剣くん?」
「……」
「お前…触っちまったのかよオイィイ!!?」
「っ…だ、だから事故だ!!故意ではなく、事故で過失なのだ!」
必死に言い訳する御剣に、2人のテンションが一気に上がった。
「御剣!お前クールな顔して女なんか興味ねぇって感じに見えたけど…やっぱ男なんだなぁギャハハハハ」
「先程から言っているだろう!触ろうとして触った訳ではないと!!」
「じゃあ、どういう状況で触っちゃったんだよ?」
涙を堪えながらノリノリ(死語)で質問する成歩堂に、御剣は重く溜息を付いて口を開いた。
***