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□夏は田舎へ行こう!-05
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深夜と呼ぶには、まだ少し早い時間帯。

「怜侍君。どう?1杯」

「いただきます」

彼女の実父に誘われるまま、御剣はグラスを受け取った。

「おい、かーさん。アレ持って来なさい。アレ。あと、何かアテも」

台所で水仕事をする彼女の実母にそう呼び付ける。ちなみに…アテというのは"おつまみ"を指すのだという事を、ここに来てから初めて知った御剣である。

しかし台所からの返事は「暇な人がしてください」という強気な言葉だった。

思わず御剣と2人、顔を見合わせる。「あーあ、やだやだ婿養子って。こーゆー時弱くてさ」と父親がぼやきながら立ち上がった。

「私もお手伝いしますよ」

「ホント?いや〜助かるよ〜」

父親は嬉しそうに呟いて、御剣を伴って台所へと入っていく。その気配に気づいた母親がちらりと視線だけを向けるが、一緒にやってきた御剣に気づいてぎくりと身体を強ばらせた。

「ちょ…お父さん!何で御剣さんにまで手伝わせてるんですか!んも〜、スミマセン御剣さん。この人ったら本当に気が利かない人で…も〜〜」

「いえ。私から言い出した事ですから」

御剣の言葉に、冷蔵庫をごそごそと漁る父親も「そうそう。怜侍君から言ったからいいの」と一緒になって頷いた。

「そういう問題じゃないでしょう!」

「だったら最初から、かーさんがすれば良かったじゃないの…ほら、御剣君。枝豆とキムチ持ってって」

「はい」

御剣は素直に手渡された枝豆とキムチを持って、居間へと戻って行った。

背後では、まだ何やら2人のきゃいきゃいと口論めいた会話が続いてたが、あくまでも楽しそうなその雰囲気に御剣の表情も自然と緩んだ。









「うむ。では、お疲れさん」

「はい、いただきます」

お互いのグラスがカチンと触れ合う。

2人同時に口を付けて中身を煽る。御剣は1口を口に含んだが、父親はビールをぐーっとそのまま一気に飲み干した。

「くぅうう!いやー美味いね〜誰かと飲む酒は〜」

「こちらこそありがとうございます…気を遣ってもらいまして」

彼女が住む、ここ田舎にはワインも紅茶も売っていない…と、ここへ来る前に聞かされていたのだが、御剣の手にはワインの入ったグラスがあった。もちろん、ワイングラスではなくて普通のガラスコップな訳だが。

「娘がね〜御剣さんはワインが好きだって言うからさ〜。街まで行く用があったからついでに見てきたんだよ〜。どうせ飲むなら、飲み慣れた物がいいだろう?」

上機嫌な父親に2杯目のビールを注ぎながら、「ありがとうございます」と御剣は返した。




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