過去拍手

□夏は田舎へ行こう!-04
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飛行機2時間、バス1時間、フェリー4時間、バス2時間…



計9時間の行程を経て辿り着くのが、私の実家。

電気はあるけど、ガスはなし。水は井戸水。そして携帯電話は通じない。



田園風景のどかな、まさしくここはドが付く田舎。



そんなところに、かの検察局きっての天才検事・御剣怜侍が1週間の有給と共にやってきた。



普段の生活ですら、一般人とは頭1つ分も2つ分も抜きん出た高級志向の彼が



………この田舎でどんな生活を送るのか。




楽しみでもあったし不安もあったが、意外と馴染んでいる彼に私は驚きを隠せない。



***



午前10時。

居間を通りかかった御剣さんは、子供達が3人横並びにTVの前に座っている光景を見て、目を丸くした。

「ム……そ、それは」

一言呻くなり、いそいそと子供達の後ろに座る。

「トノサマン……ではないか。何でこのような時間帯に…」

「4時半からもやるんだよー」

「ねー」

あーちゃんとまーちゃんの言葉に、御剣さんはますます目を見開いた。

「そ、それは…夕方の話か!?1日に2回もやっているというのか?」

普段はテンション高い子供達だけど、TVに夢中な今は御剣さんの言葉に無言で頷くだけだった。

御剣さんは、信じられないという表情で「素晴らしい…」と感嘆の呟きを漏らし、子供達と一緒になってTVにクギ付けになった。

14インチの小さなテレビは、御剣さんの大きな背中に隠れてしまう。小さな子供らに混じって大の男がでんっと座っている光景は、正直シュールなものだった。正座だから余計に。

そして、たっぷりとトノサマンを堪能した御剣さんは、いきなり私に詰め寄ってきた。予想通りの反応に、思わず半目で彼を見る。

「何故だ?何故トノサマンがこのような時間帯に…しかも、1日2回も放送されていると言うではないか!録画していた物ではないようだし、レンタルDVDでもない。一体どういう事だ?」

……そして予想通りの質問に、目眩がする私である。そんな台詞を大真面目に、その綺麗な顔で言わないで欲しい。

法廷でも同じように異議を申し立てて相手を説き伏せる彼とダブって感じて、ますます心がどんよりとする。

そんな私の心情なんかこれっぽっちも分からない彼は、もう一度「説明したまえ」と詰め寄った。

「……午前中のは先週分の、いわゆる再放送です。で、夕方からあるのが最新版です」

「………そうか。あちらとこちらでは放送局が違うから、放送枠も違うのか。なるほど」

御剣さんはうんうんと頷いて、何やら嬉しそうに歩いていった。



幸せそうで良かったです。御剣さん。



***
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