過去拍手

□夏は田舎へ行こう!-01
2ページ/3ページ




「今度、君のご両親に会おうと思うのだが」


え…何でですか?御剣さん。


「私達も、付き合い始めてじき1年経つ。結婚を前提としたお付き合いを、君のご両親に承諾してもらいたい」


は?え?マジで?


「…何故驚く。私も君もいい年だし、別段おかしい話でもあるまい。何も明日結婚式をするというのではなく、前提だ。あくまで」


あ。うん。そ、そっか。


「それに。君がどんな男と付き合っているのか、ご両親も知っていたほうが安心だと思う」


え?そんなもんですか?


「そんなもんだ。仮に私が娘の父親という立場なら、ある程度の素性は把握しておきたいと思うが」


そうですか…うーん…


「…何か不都合でもあるのか?」


いや。その……

……実はですね


「ふむ」


実は…

私の実家って……





ド田舎なんです。










「…それが?」


え?


「田舎だから、どうしたと言うんだ」


…御剣さん。ここから私の実家へ行くとなると、まず飛行機で2時間なんですよ。


「そうか。イギリスの6分の1の時間で行けるのか」


……飛行機で着いたら、バスで1時間。


「ふむ」


で、フェリーで4時間。


「ふむ」


そこからバスで2時間で、実家に着きます。


「ふ。9時間程度で私がたじろぐとでも思ったか。所要時間だけならアメリカ並だ」


……確実に日帰り不可なんですよ。絶対1泊しなきゃ、私の実家なんか行けませんよ。御剣さん、休みとかどーすんですか忙しいくせに。

何なら、御剣さんの都合に合わせて、うちの両親にこっち来てもらいましょうよ。


「馬鹿な事を言うな。私から行くのが筋だろう。休みなら有休で1週間もぎ取ってみせる。馬車馬のように働けば可能だ」


今だって十分馬車馬状態ですよ。死ぬ気ですか。大体、何で1週間も…


「ある種、私の人生が懸かっていると言っても過言ではないからな。君の父上に反対された場合に備え、説得する必要があるのだよ。私は長期戦も覚悟している」


………


「…何だ。その惚けたような顔は」


…いえ。そこまで考えてくれてたなんて、嬉しいです。


「……フ。君の為だからこそ、だ」


………あ。

ちなみに、うちの田舎、携帯繋がりませんから。


「………」


あー!今、一瞬"嫌だ"って思いましたねー!?


「──…何を言う。そのような事など、些細な事だ。とにかく、私はこれから忙しくなる。夏の休みに合わせて有休を取るつもりでいるから、君もそのつもりでいたまえ」


え?私も行くんですか?


「当たり前すぎるほどに当たり前だ」


***
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ