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□夏は田舎へ行こう!-01
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「今度、君のご両親に会おうと思うのだが」
え…何でですか?御剣さん。
「私達も、付き合い始めてじき1年経つ。結婚を前提としたお付き合いを、君のご両親に承諾してもらいたい」
は?え?マジで?
「…何故驚く。私も君もいい年だし、別段おかしい話でもあるまい。何も明日結婚式をするというのではなく、前提だ。あくまで」
あ。うん。そ、そっか。
「それに。君がどんな男と付き合っているのか、ご両親も知っていたほうが安心だと思う」
え?そんなもんですか?
「そんなもんだ。仮に私が娘の父親という立場なら、ある程度の素性は把握しておきたいと思うが」
そうですか…うーん…
「…何か不都合でもあるのか?」
いや。その……
……実はですね
「ふむ」
実は…
私の実家って……
ド田舎なんです。
夏は田舎へ行こう!
「…それが?」
え?
「田舎だから、どうしたと言うんだ」
…御剣さん。ここから私の実家へ行くとなると、まず飛行機で2時間なんですよ。
「そうか。イギリスの6分の1の時間で行けるのか」
……飛行機で着いたら、バスで1時間。
「ふむ」
で、フェリーで4時間。
「ふむ」
そこからバスで2時間で、実家に着きます。
「ふ。9時間程度で私がたじろぐとでも思ったか。所要時間だけならアメリカ並だ」
……確実に日帰り不可なんですよ。絶対1泊しなきゃ、私の実家なんか行けませんよ。御剣さん、休みとかどーすんですか忙しいくせに。
何なら、御剣さんの都合に合わせて、うちの両親にこっち来てもらいましょうよ。
「馬鹿な事を言うな。私から行くのが筋だろう。休みなら有休で1週間もぎ取ってみせる。馬車馬のように働けば可能だ」
今だって十分馬車馬状態ですよ。死ぬ気ですか。大体、何で1週間も…
「ある種、私の人生が懸かっていると言っても過言ではないからな。君の父上に反対された場合に備え、説得する必要があるのだよ。私は長期戦も覚悟している」
………
「…何だ。その惚けたような顔は」
…いえ。そこまで考えてくれてたなんて、嬉しいです。
「……フ。君の為だからこそ、だ」
………あ。
ちなみに、うちの田舎、携帯繋がりませんから。
「………」
あー!今、一瞬"嫌だ"って思いましたねー!?
「──…何を言う。そのような事など、些細な事だ。とにかく、私はこれから忙しくなる。夏の休みに合わせて有休を取るつもりでいるから、君もそのつもりでいたまえ」
え?私も行くんですか?
「当たり前すぎるほどに当たり前だ」
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