そんな時はどうぞ紅茶を

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本日は晴天なり。

突き抜けるような青空を頭上に、鮮やかな緑の芝生を足元に。

澪と、その少し後ろを御剣が歩いていく。



***



『……仕事を休んでいるそうだな』

…それは、激動の裁判が終わってもうすぐ1週間が過ぎようとした頃。

澪の携帯に、御剣からの着信が鳴ったので通話ボタンを押したら、開口一番そう言われた。

【………】

『どうした。聞こえているのか?』

自宅で死体発見なんていうトンデモ体験をして、挙句に犯人として逮捕されて慣れない留置所生活を3日送って、有罪か無罪かのぎりぎりの綱渡りを経てようやく晴れて無罪放免になって…

その時、自分を有罪と真正面から断罪してくれた(考えがあったのは後に分かったが)検事様からの久しぶりの電話が、"調子はどうだ"じゃなくていきなり"仕事を休んで云々"と言われれば、多少なりとも言葉を失う。

…と、いった事を思いながら、澪は「聞こえてます」と無難に返事をした。

『何故、休んでいる?』

【……少し休むようにと、支配人から】

澪がそう告げると、電話の向こうで僅かに息を飲む気配を感じた。

『……その…クビに、なったのか?』

【全然違います】

小さな呟きに思わずムッとして答えると、御剣が『ム』とたじろぐように唸る。思わず苦笑して、澪は説明した。

【やっぱり…ちょっと特殊な体験でしたから、本調子になるまでゆっくり休みなさいと】

『………そうか』

【あの……何か?】

改めて澪が尋ねると、御剣は何やら押し黙る。小首をかしげながらも、澪は相手の言葉を待った。

『……………まだ、本調子ではないのか?』

【………少し】

気遣いをほんの少し滲ませた御剣の言葉に、澪は曖昧な言葉で返事をした。実際、自分でも今がどういう調子なのか良く分からないのだ。

ただ、事件前と全く同じ状態でないのは確かだった。それを自覚しながら、澪は少しだけ表情を翳らせる。

もちろん、そんな澪の顔など御剣には見えていないのだが、電話の向こうは再度沈黙に沈んでいた。

【……御剣さん?】

『…明後日、休みなのだ』

急に切り出された会話に、澪は「え?」と漏らす。

『どこかへ――…出かけないか?』

思いも寄らなかった御剣の提案に、澪はぱちくりと目を丸くさせた。



***
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