そんな時はどうぞ紅茶を

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スキコは、独り言のように語り始めた。

血の気の失せた青白い頬をカタカタと震わせて、まばたきを忘れた瞳から幾筋もの涙を零しながら。



――…あの峰沢という女は、本当に酷い人なんです。アタシのダーリンをたぶらかした、酷い女なのよ。

ダーリンは…会社に行く振りをしながら、ずっとあの女を追いかけて、ずっとあの女を見ていたの。だって、アタシもずっとダーリンを見てたんだもの。

あの女の為に、別宅まで借りて。そこにあの女の物をせっせと集めて…ダーリンの傍に居ていいのは、アタシだけなのに。あの部屋にはあの女の物で溢れていた。許される事じゃないわ。

だけど、アタシ。ダーリンの事、ホントにホントにホントにホントにホントに愛してたから。いつかきっと目が覚めてアタシだけを見てくれるって信じてたんだから。



でもね。でもね。



ダーリンが…あの女の部屋にいるのを見た時…部屋で嬉しそうに笑うのを見た時…分かったの。もうダーリンはアタシを見る事はないんだって。



許されないわ。許されないわ。だって私が許さない。



そして、あの優しかったダーリンをこんな風にたぶらかして狂わせたあの女も、絶対に許さない。徹底的にこの世から抹消してやるって決めたんだから。

存在も、社会的立場からも全てにおいて抹消してやる。別宅からあの女の服を着て、あの女の部屋にある刃物を使って、あの女の部屋でダーリンを…そして、ダーリンが持っていた鍵を使ってあの部屋のドアを閉めれば、密室なんて簡単よ。

………

…最後まで上手くは出来なかったけど、でもいいの。

ダーリンがいないこの世に、私は未練なんてないわ。この世から抹消されるなんて、すごく素敵な事ね。幸せすぎてゾクゾクしちゃうわ。

もうどこにも居ないダーリン…私ももうすぐそっちへ行けるわ。次は同じ場所にいられるから、今度こそ私だけを見てくれるはず。ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっと…

………

……

…あぁ。

それと…検事さん?

このネックレス、アタシの傍においてくださらないかしら。中に大事な物が入っているの。

誰にも、誰にも渡さない。やっとアタシの所に帰ってきたんだから。

いつまでも愛する、アタシだけのダーリン…



***









「…御剣検事」

「はい」

証言台からスキコは立ち去り、静まり返った法廷。

裁判長が御剣に尋ねる。

「証人は…どうなりましたか?」

「緊急逮捕の流れになった。現在、取り調べを行なっているが…精神鑑定が必要になるかもしれない」

淡々とした御剣の説明に、裁判長は無言で頷いた。


***
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