そんな時はどうぞ紅茶を

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「あわわわわわっ!!す、すすすすみません私ったらまた――!」

引っ転んだマコが立ち上がりながら、あわあわと騒ぎ立てる。

しかし。澪と御剣の間(にある机の上)にぶちまけられた、ジップロック入りの証拠品という光景は、もう覆せない。




「…御剣、証拠品ってこれ?」

永遠に続くと思われた沈黙を、最初に動かしたのは成歩堂だった。強ばる声で呻くように呟くと、ぶちまけられた証拠品を指さす。

「…………そうだ」

御剣は忌々しく呟くと、両腕を組んで苦々しく眉根を寄せた。

「………」

澪はまばたきも声も出せず、硬直したまま目の前の証拠品に釘付けになった。



丁寧にジップロックに入れられた証拠品。

それらはアンダーウェア…いわゆる"ランジェリー"と分類される物だった。



「………その」

ごほっ、と何かを誤魔化すように咳払いをした御剣は、澪に告げる。

「この…押収物からは、君のだという決定的な証拠は検出されなかった。改めて問うが、これは――…君の物か?」

「………」

色とりどりのランジェリーを前にして、御剣が真面目な顔で問いかける。

これが?

自分の物かって?

質問の意図を理解して、澪の頬にさっと朱が走る。

「…御剣……今の発言は、ちょっとある種のセクハラ」

「だったらどう言えと言うんだ!」

成歩堂のトホホな突っ込みに、瞬時に顔を赤らめた御剣がバンと机を叩いて睨みつける。

「あー…だからイトノコセンパイは、私に持って行かせるのが正解だって言ったんッスね〜」

「くそ…あの男……給与だけでなくボーナスも査定してやろうか…」

のんきなマコの言葉に、御剣はぶつぶつと呟いて頭を抱える。

ようやく我に返った澪は、のろのろと緩慢な動きで、証拠品の1つを手にとった。

「………」

それにしても。

見るだけで恥ずかしくなるような、随分と個性的なデザインのランジェリーである。

どっちが前でどっちが後ろなのか分からない物。

紐だけで構成されている物。

布地の部分が、凶悪的かつ犯罪的に狭小面積な物。

隠す意味に疑問を覚える程に透けている物。

変な部分に穴が空いている物――…

色も、黒はもちろん。赤、紫などなど派手めな物ばかり。キラキラしてたりするのもあってなかなかバラエティに富んでいる。



これ、1つ1つ点検してジップロックに詰めたのかな…



思わずそんな疑問が浮かんだ澪の脳裏に、糸鋸が複雑な表情でランジェリーをジップロックに詰めている光景が目に浮かび、警官って大変だなとそっと同情した。

まさか御剣も一緒にその作業をした…というのは想像だけでも恐ろしくて、慌てて目に浮かんだ光景をうち払った澪である。

「…峰沢君。嫌な事を聞かれているのは重々承知しているが、質問に答えてはくれないか?」

「あ…」

憔悴しきった御剣が、生気のない瞳で再度問いかけてきたので、澪は首をぶんぶんと横に振った。

「違います。さすがにこんなのは…はかないです」

「………」

何も言わない代わりに、何故かほっと安堵の溜息を漏らす御剣であった。



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