そんな時はどうぞ紅茶を
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そして数十分経過。
「………」
御剣は階段下で腕を組んだ格好のまま突っ立っていた。時折腕時計を確認しては、軽く息を吐いて身体の重心を右へ左へと交互に移す。
さっと選んでさっと店を出るつもりでいた御剣だったが、自分が思っていた以上に時間がかかっている事に、少しだけ焦り始めていた。
"あの店"に入れた予約は19時。そろそろここを出ないと遅れてしまいそうだ。
もしかしたら。上でまた澪が遠慮しまくっていて、店員を困らせているのかもしれない。そんな考えに行きあたった御剣は、様子を見に行こうと階段へ足を向けた。
――…コツン。
「!」
頭上で、大理石の床を踏む足音が聞こえて、御剣は反射的に上を見た。
――…コツン。
緩やかなカーブを描く螺旋階段から、誰かが降りてくる。その足音は、ひどくゆっくりとしたものだった。
――…コツン。
1歩1歩踏みしめるように降りてくる澪を確認して、御剣はまばたきも忘れて食い入るように見つめる。
――…コツン。
澪もまた、御剣をまっすぐに見下ろし、1歩1歩を慎重に踏み出す。
――…コツン。
彼女が階段を降りてくる度、繊細なレースで縁どられたスカートが、ふわりと誘うように揺れる。
御剣は、組んでいた両腕を解いて降ろすと背中に回した。
――…コツン。
ゆっくりと確実に階段をクリアしていく彼女の白いヒールは、大理石を軽やかに響かせる。
そして見事に
次の1歩を踏み外した。
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