そんな時はどうぞ紅茶を
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人生楽ありゃ苦もあるさ。
……それで解決するなら苦労はしない。
思えば、同僚ウェイトレスのこの一言が引き金だったのかもしれない。
「ねぇねぇ。峰沢さんって何座?」
「…え?」
バンドーホテルの女子従業員ロッカールーム。
呼びかけに応じて澪が振り返ると、ウェイトレスは何やら熱心に雑誌を読んでいた。表紙にはキラキラとした星が溢れるほどにプリントされている。ちなみに雑誌のタイトルは"全てお見通し!上半期の星座占い"と読めた。
「これね、すっごく当たるよ!」などと言われたが、占いの類は朝のニュース番組のワンコーナーでチェックする程度の興味しかない。ちなみに、今朝の占い内容は記憶にすらない。
でも一応、自分の星座を告げる澪。ウェイトレスはぱらぱらと雑誌をめくり始めた。
「えーっと、今日は〜…………あ」
「?」
「峰沢さん。今日、すっごく悪い日だよ」
「………え?」
「"何をやっても上手くいかない"だって!気を付けた方がいいよ!」
「…うん」
真剣にこちらを見るウェイトレスに、澪は弱々しく頷いてみせた。
正直、どうでもいい。
「あ!」
「どうしたの?」
「峰沢さんの今日のラッキーアイテム、"きりたんぽ"だって!厄除けに持っときなよ!」
「………そうだね」
何で占いって、こんな微妙なアイテムを平気で"ラッキーアイテム"などと指定するのだろうか。何かの罰ゲームではないのか?
澪はウェイトレスから視線を外すと、バンドーホテルの制服に着替え始めた。
***