そんな時はどうぞ紅茶を

□08
1ページ/3ページ




人生楽ありゃ苦もあるさ。

……それで解決するなら苦労はしない。



思えば、同僚ウェイトレスのこの一言が引き金だったのかもしれない。

「ねぇねぇ。峰沢さんって何座?」

「…え?」

バンドーホテルの女子従業員ロッカールーム。

呼びかけに応じて澪が振り返ると、ウェイトレスは何やら熱心に雑誌を読んでいた。表紙にはキラキラとした星が溢れるほどにプリントされている。ちなみに雑誌のタイトルは"全てお見通し!上半期の星座占い"と読めた。

「これね、すっごく当たるよ!」などと言われたが、占いの類は朝のニュース番組のワンコーナーでチェックする程度の興味しかない。ちなみに、今朝の占い内容は記憶にすらない。

でも一応、自分の星座を告げる澪。ウェイトレスはぱらぱらと雑誌をめくり始めた。

「えーっと、今日は〜…………あ」

「?」

「峰沢さん。今日、すっごく悪い日だよ」

「………え?」

「"何をやっても上手くいかない"だって!気を付けた方がいいよ!」

「…うん」

真剣にこちらを見るウェイトレスに、澪は弱々しく頷いてみせた。

正直、どうでもいい。

「あ!」

「どうしたの?」

「峰沢さんの今日のラッキーアイテム、"きりたんぽ"だって!厄除けに持っときなよ!」

「………そうだね」

何で占いって、こんな微妙なアイテムを平気で"ラッキーアイテム"などと指定するのだろうか。何かの罰ゲームではないのか?

澪はウェイトレスから視線を外すと、バンドーホテルの制服に着替え始めた。



***
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ