そんな時はどうぞ紅茶を
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澪が入れた紅茶を1口飲んだ御剣は、不味いとも美味いとも言わなかった。
ただ一言、「うム」と頷いただけだったが、2杯目を尋ねられると無言でカップを澪に向けた。感想はともかく、一応合格点らしい事を悟る澪である。
「…今後も君が来るのなら、一応名前だけでも聞いておこうか」
黒い革張りの椅子に深く腰掛けて、2杯目の紅茶を口にする御剣が尋ねる。
「申し遅れました。峰沢澪と言います」
「峰沢澪…普段の君の役職は?」
「ウェイトレスです。ホテル内のレストランにおります」
「…分かった。覚えておこう」
最後の1口を飲み終えた御剣は、空のカップをソーサーに乗せて澪に返した。
「では。よろしくお願いします」
「あぁ」
再び仕事を始めた御剣に、澪は一礼してからワゴンを押す。
退室前、「では、失礼いたします」と声を掛けたが、御剣は書類から顔を上げなかったので、そのまま静かに立ち去った。
これが、
2人の最初の出会いだった。
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