D-Novel:短編
□おふろあひる
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自宅で自分以外の人間が過ごすと言う事は
部屋が少しずつ変わっていく事である。
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例えば…枕元に置かれた、およそ(私個人は)可愛いとは思えないブタのぬいぐるみ。全体的にたるんでいて、表情も締まりがない。
そんな使用用途不明なピンク色の物体が、インディゴブルーのシーツの上にごろんと転がっている。彼女はそれを"可愛い"と評するが、美的観点は人それぞれなのだと思い知らされるばかりである。
ちなみにそのブタと並んで、薄紫のカバのぬいぐるみも最近出現した。これもまた全体的に締まりのないフォルムで、カバだけに見ているこちらをバカにしてるのかと問いただしたくなる。今後また別種が増えるのか、それが私の目下の考え事である。
洗面台にはピンクの歯ブラシ。私が普段使用する黒い歯ブラシと一緒のコップに並んで立っている。ちなみに歯磨き粉もわざわざ持参してここに立っている。
「御剣さんの歯磨き粉、ミントがキツくて辛いんですよね〜よくあんなの口に入れられますよね」
などと言われたが、好みの問題なので別に何も言わないでおいた。
キッチンに行けば、ガラス製やモノトーンの無機質な食器に紛れて、パステルカラーのカラフルなドット柄の食器が並んでいる。皿だけでなく、マグや箸・フォーク・スプーンまでもカラフルに揃えられてて、そこだけ一種異様に浮いている。
それは今まで…彼女と付き合う前まではなかった変化だ。
念の為に言っておくが、半同棲…という種類にあたる。半同棲でこれなら、完全に同棲した暁にはこの部屋はどうなってしまうのか全く予想出来ない。
そして
今日もまた、私の部屋に新しい変化が起こった。
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