神様の言う通り
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「――…はい?」
鷹宮さんが目を丸くさせて、私を真正面から見つめた。
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それは、鷹宮さんの自宅で彼女の手料理を楽しんだ後の事だった…いや、楽しんだというのは、少し語弊がある。恐らく、彼女は普段通りだっただろうが、私はこの部屋へやってくる少し前に起こった"ある事件"が気がかりで、正直上の空だった。折角の貴重なひとときだというのに、なんともったいない事だ…と、タイミングの悪さをひっそり呪う。
ある事件――…それは…
「それにしても、御剣さんにはまた助けられちゃいましたね。まさか植木鉢が落ちてくるなんて…実は、今もちょっとドキドキしてるんです」
「………」
のほほんと笑う彼女だが、私は笑う事が出来ずにその様子を黙って見つめる。余計な不安を与えたくないという思いから、これまで情報を伏せていたが、もうそういう気遣いをしている場合ではない。鷹宮さんは当事者なのだから、事態を知る権利がある。それに、安全確保の為には、彼女も事情を知っておかねばなるまい。
「…鷹宮さん」
「はい?」
意を決して彼女を呼ぶと、少し驚いた表情でこちらを見る。呑気な自分と真剣な私との温度差に戸惑っているようだ。
「……君を怖がらせたくないと思って黙っていたのだが――…事態は思った以上にひっ迫している。当事者である君にも話すべきだと私は考えた」
「は、はぁ…」
「落ち着いて聞いて欲しい。君は…」
「はい」
「君は…狙われている」
「――…はい?」
鷹宮さんが目を丸くさせて、私を真正面から見つめた。
………少しの沈黙を挟んで
「…えっと。えーー…っと、えー…私が、ネラワレテル?」
自分自身を指差ししつつ、やはり意味を飲み込めなかった鷹宮さんがきょとんと首を傾げたので、私は「そうだ」と頷く。
「狙われてるって…その、どういった意味でしょう?」
「標的といった意味だ」
「恋愛の惚れたはれた――…の、狙われるじゃなさそう…です、ね」
斜め上方向に思いっきりズレた彼女の予想に、私の表情が渋くなったのを見たのだろう。鷹宮さんの言葉が尻すぼみになって、同時にしゅんと肩を落とした。
「…そのものズバリ、命を狙われてるって事、ですか?」
「――…ズバリ、そうだ」
「さっき、植木鉢が落ちてきたから?」
「それで確信した」
「でも、それってただの偶然じゃ――…」
苦笑しながらやんわりと否定した鷹宮さんに、私は渋い表情を崩さないまま、頭で組み上がったばかりのロジックを彼女に語った。
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