神様の言う通り

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まぁ僕も。

局長にまつわる例の件について、微力ながら手助け出来ないかなと常々思っている訳なんだけど。




***



ある日、僕は検事局長室のドアをノックした。

「失礼しますよ。局長」

「………あぁ、牙琉検事か」

局長室に入ると、局長は大きくて広くて豪華なデスクで黙々と書類処理に追われている。そんな彼の前へ、僕は歩いて行くとぴらっと書類を突き付けた。

「今、僕が担当している案件の家宅捜索の令状。これに局長のハンコを頂けないかなぁと」

「………」

局長は突きつけられた令状をメガネの奥から神経質そうに睨みつけて、無言のまま受け取った。そしてデスクの引き出しを開けてハンコを取り出す。

「……ム?」

押す前に書類を見ていた局長が、何かに気付いて令状をぺらりと捲る。そこに現れたもう1枚の紙切れに、局長の眉間のシワが更にぐっと深くなるのを、僕は笑顔と共に眺めていた。うん、成歩堂さんの言う通り…御剣さんって一見分かりにくい感じなんだけど、表情は割と素直に出るんだな。

「なんだコレは」

「おっと、これは失礼。うっかり一緒に持ってきてしまったみたいだ」

不愉快そうに眉根を寄せて、令状の下に"たまたま"あった紙切れを見る局長に、僕は前髪をかきあげながらとぼけてみせる。そんな態度に何か思う事があったのか、局長が紙切れから視線を上げて口を開きかけ…そして次の瞬間、はたと固まると紙切れにもう一度視線を戻した。

「………ム」

「どうかされましたか?局長」

「このチラシは……」

呟きながら、局長は紙切れ――…チラシをつぶさに読み始める。少しわざとらしいやり方だから勘付かれるかと少し心配だったけど、この様子だと大丈夫のようだ。

「ギフト特集のチラシが何か?」

「…いや。知っている店が発行しているチラシだ、と」

独り言のように呟きながら、局長はチラシの一番下に記載されている店名部分をじっと見つめた。

「へぇ、局長もご存知なんですか?夕焼け駅側の公園近くにあるコンビニ」

すると局長は口ごもって、「あぁ」と曖昧に返答した。知っているも何も常連だもんな、御剣さんは…と、僕は心の中でほくそ笑む。

「ギフトチラシか…何か頼むのか?」

「えぇ。検事局の事務員に、ちょっとプレゼントをと思って」

女の子にですけどね、とウィンクしながら付け加えて説明すると、局長はチラシから顔を上げた。

「誕生日か何かあるのか?」

「いえ?別に」

あっさりと否定してみせると、局長がますます不審げに眉根を寄せて僕を見る。

「――…特別な出来事もないのに、プレゼントを贈るというのか?」

「えぇ。まぁ普段から彼女達にはお世話になってますから、理由が全くないという訳でもないですが…別にプレゼントを贈る理由にはならないでしょうね」

「………」

「それに、女の子は特別な日にプレゼントを貰うより、こういう何もない時に貰った方が喜びますし」

「ム…そうなのか?」

――…予想通り、局長が話に食いついてきた。きっと例の片思いの子に何か…とか考えてるんだろう。そんな局長の(分かりやすい)考えを読みながら、僕は「えぇ」と笑って頷いてみせた。



***
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